医者が末期がん患者になってわかったこと
(中経の文庫)

2013.04.21
医者が末期がん患者になってわかったこと <br />(中経の文庫)

著:岩田 隆信
出版社名:中経出版
発行年日:2007年01月
価格:\580(税込)
ISBN:978-4-8061-2633-1

表紙をめくると、まず目にはいるのは「妻・規子、娘・綾乃、そして医学を志す者すべてに捧ぐ」という言葉。本書は、自分の闘病の体験を書き残すことを「最後の仕事」と考えた、著者の最後のメッセージです。
その著者は脳外科の専門医、岩田隆信さん。優秀な脳外科医として活躍していながらも、ご自身が悪性脳腫瘍を発病してしまいます。計3度の手術を受け病魔と闘いますが、発病の翌年1998年に、愛する妻子への思いを抱えながら42歳の若さで他界されました。

本書でまず著者は、自らが病気になって気付いた、脳腫瘍治療の問題点を訴えています。それは、医者の言葉やしぐさの大切さ、治療には病院の都合によるところが大きいことなど、自分も含めた医療者が、患者に対していかに一方的に接していたかということを痛感したからです。一生懸命に治療に当たっていても、患者さんが望んでいることと、実際の医療事情との間には大きな落差が存在していたのです。

医師の闘病記ということで、「前向きに治療にはげみ、頑張って生きる望みを持ちましょう」といった内容を想像しがちですが、著者は一人の患者として、病気に対する恐怖や治療の苦しみを包み隠さずに語っています。脳外科の専門医であるがゆえに、かすかな症状の変化から自分の病状の進行を悟り、死に直面して怯えます。しかし、そんな中で家族に支えられ、生きる意味や生き甲斐を見つけていくのです。

岩田医師の「最後の仕事」。それは、自分の体験を書き残し、闘病の本質を伝えることでした。
真剣に「今を生きる」大切さ。
恐怖に感じても恥じることはない。
家族との繋がりがどんなに素晴らしいものか。
そして、死に向き合う人を、医療の現場ではどのようにサポートしなければいけないのか。
このメッセージを無駄にしないためにも、ぜひ本書を多くの方に読んでいただきたいと思います。

看護ネット事務局

看護コミュニティ

ページ評価アンケート

今後の記事投稿・更新の参考にさせていただきたいので、ぜひこの記事へのあなたの評価を投票してください。クリックするだけで投票できます。

Q.この記事や情報は役にたちましたか?

Q.具体的に役立った点や役に立たなかった点についてご記入ください。

例:○○の意味がわからなかった、リンクが切れていた、○○について知りたかったなど※記入していただいた内容に対してこちらから返信はしておりません

最大250文字