「大人になってから学ぶ時」

外崎 明子
  • 2007/03
  • 聖路加看護大学
  • 看護師:外崎 明子

私は成人看護学を担当する教員ですが、本当のところ看護を強く志して看護学部に進学したのではなく、このため当初は戸惑いを感じていたように記憶しています。しかし看護学を学び、実践し、研究し、さらに教える立場になり、自分の人生が折り返し地点を過ぎた今、この道を選んでよかったと思うことがしばしばあります。

その1つは、「人の強さ、そしてあわせ持つ脆さ」を感じる面白さです。私は職業上、辛く厳しい病気を抱えながら、希望やユーモアを持ちながら生活する人やその患者様を支えるご家族の姿を見ることが多くあります。そんな時人は「どんな立場になっても自分なりの希望を見出して、自分の人生の意味や価値観をその状況に見合うように上手に折り合いをつけて変化させ、その場を乗り切ろうとする」という強い力をもっていることに気づかされます。同時に人は自分の中でわき起こるこのような変化に対しては上手に状況を乗り越える力を見せますが、「他人から指摘されたり、説得されても、なかなか自分を変えられない」という、(一面強さでもありますが)脆さ、弱さも持っています。ここが「子ども」とは異なる大人の特徴です。これが現在注目の「メタボリック・シンドローム」を予防するために生活習慣を変える必要性を諭されていても、なかなか食生活や運動習慣を簡単には変えられない原因となっています。

  私はここ数年、スポーツジムに通うことが大切な生活の一部です。仕事、家事、子育てなどさまざまな時間的制約がある中で、ジムに通う時間を確保することが自分へのご褒美であるような感覚を持ちます。そして学ぶことの面白さを感じることも、今の自分の糧になっているのだと、自分に都合よく意味づけています。

  スポーツジムには年齢、職業、運動への意欲や運動能力がさまざまな人々が集まります。この人々が一つの空間で、インストラクターの指導の元、エアロビクス、ピラティス、筋力トレーニングなどで汗を流します。スタジオレッスンの場合、どの場所に位置するかは、ある程度その人の意思を示します。これは大学の講義で学生がどの座席に着席したがるかの傾向と同様なものです。そしてそのレッスンを定期的に続けるか否かは、インストラクターとの相性が左右します。レッスンを受けることを選択したのは私自身であるにもかかわらず、「苦しかったトレーニングを応援し、トレーニングを完遂したことをねぎらうだろうか」、「難易度が高まって劣等感を持ちそうな時に、わかりやすく次の段階へ導いてくれるだろうか」、「少しずつでも前進していることをしっかり記憶に留めて、フィードバックを返すだろうか」、「頑張れるエネルギーがある日を見抜いて強く励まし、反面、エネルギーが不足している日はそれなりに見過ごして欲しい」といった欲求を持ちながら、レッスンに参加している自分を感じます。そしてこのような多種多様なニーズを持つ一様ではない集団を教え導くのが、インストラクターという職業です。

  これは私の今の職業である、学生を導くこと、さらに患者様が病気と折り合いを付けながら生活を調整しなければならない時に、その人を変える手助けをすることと共通する面がたくさんあります。大人になった人は「説得するだけではなかなか変わってくれない」というのは、これまで看護師として多くの人と関わる中で感じ取ったことです。しかし苦しくても、その人の気持ちが満足する面を見いだして支えていくと、人は自分の力で達成感を獲得しながら、前進しようとする力を持っています。その人が自分の力で前進する力を発揮できるように、盛り立て、励まし、関心を示し、難しくて圧倒されてしまいそうなことをわかりやすく分解して消化(理解)を助けるのが、援助者である私の仕事なのだろうと、自分が学ぶ立場に身を置くときに感じています。

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