未然の対処

内田 千佳子
  • 2007/06
  • 聖路加看護大学 COE研究員
  • 保健師:内田 千佳子

皆さんの中には外出から戻ったら手洗いとうがいをし、食後や寝る前には歯磨きをすることが習慣になっている方が多いと思います。それは何のために行っているの、と訊かれればきっと風邪や虫歯を予防するためだと答えますよね。手元の小学館新国語例解辞典には予防を「病気にかかったり災害などが起こったりしないように、対策を立てて未然に防ぐこと」と記してありました。「いい説明がしてあるなー。」と感心しつつ、つまりこれから起こりうる良くない状況を科学的な根拠に基づいて予測し、前もって対処することで私たちの生活や命を守ってくれるすばらしい行いなのだ、と勝手に解釈し、予防という言葉の持つ意義に再び感心してしまいました。

私はここでは、看護職もかなり予防という視点を持って対象となる方への支援を行っているということを皆さんにお伝えしたいと思います。

保健・医療の分野では一次予防・二次予防・三次予防という言葉を使うことがあります。一次予防は健康な人が病気を防ぐために、その要因となる危険因子を取り除く行いですが、それだけでなくより健康な心身を作り上げるための行い、すなわちヘルスプロモーションもこの一次予防に含まれます。例えば予防接種や生活習慣病を防ぐための食事、運動、休養、飲酒、喫煙の習慣の改善、などが含まれます。保健センターの保健師、学校の養護教諭や保健の教員、会社の健康管理室の看護師・保健師などがこの一次予防には深く携わっています。治療が必要な病気になると診察代・検査代・薬代などがかかりますから、一次予防で健康を維持・増進させることが一番お金はかからないと思います。

二次予防は早期発見と早期治療です。まだ自覚症状が現れる前に健診等で見つけることのできる小さながんや高コレステロール血症、高脂血症、高血圧、抑うつ状態などがあります。これらは早いうちに治療・対応することでがんの完治や心筋梗塞、脳梗塞などを防ぐことにつながります。会社や保健センターなどではこのような健診結果が出ると、保健師や看護師がどうしたら高コレステロール血症や高血圧などが改善できるか、食事や運動などの生活面から指導してくれます。このあたりで問題を食い止められれば出費はわりと少なくて済むと思います。

さて三次予防ですが、これは既に病気にかかってしまった人が、これ以上悪くならないようにすることや合併症、再発などを防止することです。

以前、私は病院で訪問看護の仕事を十数年していました。訪問看護の仕事は、病気や障害を抱えていても、住み慣れた我が家で安心してご家族と一緒の生活を送ることができるように、医療の面からだけでなく生活全体を通して支援することですが、思い起こすと三次予防の部分は随分ありました。

訪問看護の中で私がとても気を遣ったことの一つに利用者の方の病気や障害が避けられるはずの原因で悪化したり、合併症が起こったりするのを防ぐことでした。一日のほとんどを寝たままの状態で過ごされている方はそれだけで、肺炎や尿路感染症になりやすく、ましてや麻痺などで飲み込みがうまくできなかったり、人工呼吸器の装着や膀胱留置カテーテルの挿入をしていると感染の危険性は更に高まります。抵抗力の落ちた方にとっての感染症はあっという間に命を奪うこともあるのです。

ですから感染予防に対するご本人や介護をなさるご家族への支援は大切でした。具体的には口腔内・身体の清潔、充分な食事・水分摂取、適宜体を動かすこと、医療機器の清潔管理、ご家族が風邪などの感染症にかからないこと、などです。病気や障害にもよるのですが、一つ一つなぜそうすることが必要なのか、その根拠を示しながら説明し、ご本人やご家族が続けやすく、できるだけ面倒でない方法を一緒に考えました(でもご家族がすばらしい工夫をされて、それを私が別のご家族にお教えすることが結構ありました)。

また介護をしておられるご家族への介護負担への軽減にも気を遣いました。ここでは一次予防や二次予防をしたといえるでしょう。介護をされているご家族は今までやってきた仕事や家事に加えての介護となりますから、当然心身への負担は大きくなります。訪問時は介護の負担を軽減するためのヘルパー・デイケア・ショートステイの利用や介護用品・福祉器具の利用、経済的負担を軽減するための制度の利用、介護者の健康を守るための健診・受診の勧めなどについての支援や、ご本人やご家族のお話を伺って不安の軽減などに努めました。

予防の効果は見えづらいものです。でも在宅で療養されている方にとっては、病状が安定し、ご家族も疲弊することなく、安心して在宅での療養が継続できたとしたら、それは何らかの予防行動が少なからず影響したと考えていいのではないでしょうか。

病気やけがの予防、からだに問題があった時や気持ちがふさいだ時などの対処のしかた、もっと健康的な生活をするにはどうしたらいいのかなど、どのような健康状態であってもからだやこころのことで気になることがあったら、あなたの身近な場所の保健センターや学校、会社、病院、訪問看護ステーションなどの看護師や保健師にちょっと相談してみて下さい。少しはお役に立てるのではないかと思います。

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