その人らしい生活を支えるために

御子柴 直子
  • 2010/07
  • 看護師:御子柴 直子

歴史を振り返ってみると、医学という分野は短い間に急速に進歩しています。よく語られている印象はありますが、医学技術の進歩が早かったために、医療は主によりよい治療成績を目指し、本来の治療を受ける人間の人生観、個々の事情といったものはあまり省みられなかったように思います。

しかし、最近になってようやく医療を行う中で個人の人生観、価値観の重要性が認識されるようになってきました。具体的には、尊厳死といった考えが広まり、乳がんにおける乳房温存術に注目が集まるのは治療成績の他にQOL(-Quality of Life-生活の質-)を重要視する考えがあってのものです。個人の価値観、QOLといったものを重視する流れは今後より広がってゆくものと思われますが、実際働いてみると、まだそういった流れはごく一部の分野に限られていると感じました。

私は病棟では内科、外科の両方の側面から肝癌の方に接してきたわけですが、肝癌の場合にはウイルス性の肝硬変を背景に発生することが多く、そのためにひとつ治してもしばしば繰り返し新たなものができる傾向があり、他の癌に比べ、再発率が高いという特徴があります。肝癌の治療にはRadiofrequency Ablationをはじめとする局所療法、肝切除、肝移植と様々で複数の選択肢があります。どの治療にも一長一短あるなか、原則的に癌のサイズや数、広がりをみて生存期間が長くなる治療が選択されていますが、治療成績がさほど違わないケースも多く、例えば局所療法、肝切除でどちらを行ってもよいケースはしばしばあります。そういった場合最初に外科に受診するか、内科に受診するかによっても治療は異なってくることもあります。このような中、肝癌の方にとって、治療の体への負担の程度や、繰り返し治療を行って体への影響はどうなのか、社会への復帰はスムーズにできるのか、すぐ動けるようになるのかどうか、痛みはどうなのか、そういったことと、生存率や再発率などの治療成績を天秤にかけて治療を選択できるとより理想的なのではないかと考えました。

しかし、現実的には上記のような内容を客観的にうまく評価できる方法は確立しておらず、治療を受ける側の視点から治療を評価することはされていませんでした。実際に肝癌が再発し、再び手術を受けるべきか、局所治療をすべきか悩まれている方は、体への負担や生活への影響を主に心配されていましたが、明確に答えられませんでした。そういった背景から、数年前から肝癌特異的なQOLをはかる尺度を開発することに取り組んでいます。今後はこれらを利用して治療を受ける方々の視点から治療を評価し、治療を選択する段階から自分らしい生活を維持・向上できるような支援につなげてゆけたらと思います。

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