『桜の季節 患者さんから教わったこと』

細田 志衣
  • 2014/04
  • 聖路加国際大学 看護実践開発研究センター
  • がん看護専門看護師:細田 志衣

看護師になり十数年、悩み立ち止まる度に、背中を押してくれる患者さんがいます。

がんの専門病院で看護師として勤務していた4年目、私は20代の女性患者Aさんを受け持ちました。Aさんは稀な悪性腫瘍と診断され、看護師の仕事を辞めて、がん化学療法を受けるために遠方から来院し入退院を繰り返していました。明るく気さくなAさんは他の患者さんと談笑することが多く、医療者も含め周りを楽しませるユーモアに満ちた方でした。

初回入院から半年以上、受け持ちとして関わる私に時に先輩看護師として多くのことを教えてくださり、病気や治療と向き合うお気持ちを聴かせていただく機会もありました。ある日、散りゆく病院の庭に散歩に出かけた際、桜を見上げながらAさんが涙を流されました。私はそばに座りAさんの震える背中をさすることしかできませんでした。
翌日、Aさんから頂いたお手紙の一部をご紹介します。

病気になってから無性に侘しくなったり、虚脱感に襲われることがあります。
先の見えないゴールにもがいて、あわてふためいて、でも何も変わらなくて変えれなくて...そんな繰り返しです。どうしてよくならないんだろう。いつまで続くんだろう。考えても仕方のないことばかり考え込んでしまう。
誰にも話すことがなく、この時期がくると最悪です。ちょうど気分が下り坂だったので救ってもらえてよかったです。ありがとう。

病気や治療と対峙し苦悩し葛藤するお気持ちが綴られた手紙を読み、私はAさんのことを何もわかっていなかった...と複雑な思いに駆られました。一方で、看護師が患者と共に存在することが大切なケアのひとつであると感じる機会ともなりました。
残念ながらAさんは出会ってから3年半後に病気の再発と進行により、天国に召されました。Aさんと入院中から退院後も交わした数々の手紙は、今も悩み立ち止まる度に読み返し自分を鼓舞しています。
今年も桜の季節が巡るたび、あの日Aさんと眺めた桜を思い出し、看護師として限りある日々を丁寧に歩んでいこうと思いを新たにしています。

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