がん治療後の支援-その人らしく生きることとは?

高橋 奈津子
  • 2014/11
  • 看護師:高橋 奈津子

私は、以前、血液内科病棟で働いていました。その経験から、造血幹細胞移植(骨髄移植)を受ける患者さんの研究をすすめていました。造血幹細胞移植は、大量の放射線療法、化学療法によって自分の骨髄機能をほぼ0の状態にした後に、HLAの適合する造血細胞を輸血のように点滴(移植)する治療です。がん治療の中でも、身体的にも精神的にも最もきつい治療のひとつといえるでしょう。

私は、Aさんに移植後の体験についてインタビューをしました。Aさんは20代前半で、移植後、様々な感染症や造血細胞移植に特有の副作用(GVHD)にも悩まされ、移植後1年程度の入院後、なんとか退院された方でした。私は、Aさんを看護する中で、私だったらこんなに頑張れるだろうか、耐えられるだろうかという思いを抱いていました。入院中は、黙って様々な症状に耐えているといった印象のAさんでしたが、インタビューでは、ゆっくりお話ができる環境だったせいか、様々なことをお話してくれました。

Aさんは、GVHDの中でも、あまり頻度の多くない白斑の症状に悩まされていました。しかも、それが顔、手といった人目につく場所だったので、特につらかったようです。化粧などで隠すことは嫌だと話していましたが、白斑の症状のため、就職の面接時に敬遠されてしまうのが、きついと言っていました。若いAさんにとって、造血幹細胞移植という過酷な治療を乗り越え、やっと少し働けるかも、働きたいと思っても、治療後の副作用で働けないことは、なんのために辛い治療を頑張ったのかという思いも生じさせているようでした。でもその中でも、あんまり深く考えないように、淡々とすごすということで、日々の様々な思いに対処しているようでした。

移植後もつらい状況が続き、退院後も決して、自分の満足といえるような生活を手にしていないAさんに対し、私は、ふと「Aくん、移植ってやってよかったと思ってる?」と聞いてしまいました。すると、彼は、まっすぐ顔をあげ、しっかりとした口調ではっきり「もちろん!! だって移植しなかったら、今、生きていないよ」と言いました。移植は、適合するドナーが存在すること、そして善意による提供が不可欠の治療です。過酷と思われる状況の中でもそのようにいえるAさんの強さを感じました。

若くしてがんになるということは、そう多くはありません。人生のうちでもっとも楽しく充実するときが、病いによって様々な制限を受けます。そのような状況下で、がんを体験したからこそ得られたその人の強さやしなやかさなどが社会的には認められにくく、治療後も不利益が生じている現実があります。最近、がん患者さんの就労の問題も少しずつ認知されるようになっていましたが、まだまだでしょう。また私は、現在、女性がん患者さんのその後の妊娠・出産の可能性を守るための妊孕性温存についての研究をすすめています。がん治療によって卵巣機能が低下してしまう場合があるため、治療前に卵子や受精卵、卵巣組織を凍結保存しておくことが状況によっては、可能になっています。この方法は、妊娠・出産を保証するものではありませんが、この情報を知り、自分なりに納得してなんらかの選択することには大きな意味があると思います。がんになったとしても、その後の人生がその人らしくあるような支援について今後も考えていきたいと思っています。

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