今を感じる

川上 千春
  • 2015/07
  • 聖路加国際大学
  • 看護師:川上 千春

実は、この原稿の依頼を受けたのは2回目である。確か8年程前だったように思う。以前は何をテーマに書いていたのか眺めてみたら、【今、私がここにいるということ-Tender love careから-】だった。何をテーマにするか悩みに悩んだが、前回と同様に「今」つながりにしようと思う。

私は介護保険制度が始まる前、老人訪問看護といわれていた時代から訪問看護に携わってきた。この時代は在宅ケアという言葉も耳慣れない、混沌とした時期だった。きっと「訪問看護って何をするの?」と医療専門職間においても理解されていなかったことだと思う。そのような状況の中でも、私が所属していた訪問看護ステーションは、高齢者だけではなく、がん患者や在宅での看取り、精神を患っている方にも訪問看護を提供するという当時では珍しい画期的な事業所だった。そこで出会った利用者や家族、スタッフから私は様々なことを学び、気付かされ、現在の私がいる。
そして、往診医であった精神科医から言われた一言一言を時々思い返すときがある。

訪問看護をしていたある時、その医師に尋ねられた。「君は、"今"を感じていますか?」と。「え!?今って今ですか?」"今"という意味がわからなく尋ね返した。すると、ちょうど目の前に氷水の入った水滴がいっぱいついたコップがあった。「それ、さわってごらん」と医師。私はそのコップにふれ、「冷たい!」と思ったままを呟いた。すると、「冷たいと感じた、それが今だよ」と。 思い返してみると、なぜそのような話になったのか覚えてないが、きっとその当時、私はよっぽど様々なことに悩んでいたか、充実していたかのどちらかだと思う。

なぜ人は後悔や悲しみ、怒りなどの感情をもつのか?それは、その苦しさを経験した「過去」に生きているから。そしてまだ起こってもいない出来事を想像し不安や恐怖にとらわれてしまうのは、苦しい状況におかれた「未来」に生きているからだそうだ。

訪問看護では、利用者や家族との心の距離がとても近かったりする。その分、自分が提供した看護に対して、ダイレクトにフィードバックを受けることも多い。そして、自分自身がどんな人間であるのかを突きつけられ、苦悩し、「私、生きているなあ」と感じる。きっと、それを楽しめるかどうかがkeyなのだと思う。

みなさんは、今を感じていますか?今を生きていますか?
私はこれからも自身を振り返りつつ、今を感じ、看護を楽しみたいと思います。

看護コミュニティ

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