精神科外来での経験を通して

青木 裕見
  • 2017/06
  • 看護師・保健師:青木 裕見

『こういうところに来たら、負けだと思っていた、、、』
『わたしみたいな人、他にもいますか、、、?』

私はこの3月まで6年間、大学生を対象とした精神科の外来で保健師として働いていました。辛い気持ちを抱えて相談に来る学生さんに、最初にお会いしてお話を伺うのが私の役目で、冒頭は、そこでの忘れられない言葉のいくつかです。

皆さんは、精神科と聞くと、どんなイメージを持ちますか?
誰だって元気でいたい、できれば病院にはかかりたくないというのは同じだと思いますが、中でも、特にお世話になりたくないのが精神科かもしれません。私が勤務していた外来は、建物の5階にあったのですが、エレベーターで乗り合わせた人に5階で降りるのを見られたくないからと、5階まで階段で上がってくるという学生さんもいました。
また、精神科の病気は馴染みがないし、よくわからないという方も多いかもしれません。大学生の年代は、種々の精神疾患が現れる時期であり、私がお会いした学生さんも、初めて精神科にかかるという方が大半でした。相談に来るまで、『自分だけなのではないか』とひとり悩んでいたという方も多く、『あなただけではないのですよ』とお伝えするだけで、胸のつかえが取れたかのように、涙を溢す方もいらっしゃいました。ご家族も、はじめはそれが症状だとは気付かない(知らない)ということもよくあり、ある親御さんが私に、『自分の考えが抜けて人に伝わるなんて、そんなことあるはずないじゃないですか』と迫るようにおっしゃったのが、今でも忘れられません。

病棟では透析室と集中治療室に勤務していたため、私自身、精神看護はほぼ一からの学び直しでした。この10年程で、治療や制度など精神科をとりまく環境はがらりと変わり、病気や障害があっても希望をもち、その人らしく生きていく、リカバリーという考えが精神科の主要概念になっていることも知りました。お会いした学生さんも、最初は不安定でも、次第に症状との付き合い方や折り合いの付け方を身に付け、ときに入院や休学が必要なことはあっても、夢や目標に向かって社会人になっていく、その姿にこちらが勇気づけられる日々でした。

この4月から母校に戻り、精神看護の教育と研究に携わることになりました。一般の方々には(ともすれば精神科以外にいる医療者にも)、精神科はブラックボックス的なところが多いと思いますが、どんな症状があって、どんな治療やケアが行われているのか、誰にでもわかるようなかたちで共有できる、そうなるといいなと思っています。できることから少しずつ、これから頑張っていきたいです。

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