精神科看護の世界に飛び込んでみて

高妻美樹
  • 2019/03
  • 看護師・保健師:高妻美樹

「先生はどうして精神科の看護師になろうと思ったのですか?」

今年度から精神看護学の教員となり、学生から素朴な質問を何度か受けたことがある。
どうやら精神科看護は不思議な領域に見えるらしい。
そのようなとき「どうして精神科看護を選んだのか」自分に聞いてみる。

思い返せば、もともと興味があった領域は国際看護であった。
10代の私の将来の夢は、途上国で看護師として働くこと。
大学に入学し、アルバイトで貯めたお金でインドにあるマザーテレサが設立した施設へボランティアに行った経験がある。

「インドまでやっと来たぞ!頑張ろう!!」と意気込んで施設の玄関に入った初日、全身包帯で覆われているご遺体がタンカーで運ばれている光景を目にしたことを今でも鮮明に覚えている。 周りを見渡せば、施設に入れず横たわっている人や、瀕死の状態で物乞いをしている人が道端にいる状況であった。
物品は不足し衛生状態も悪く、日本のように療養環境を整えることはできない。
「この人たちは今までどのような生活をしてきて、ここにいらっしゃるのだろうか・・・。どのようなことに苦しんでいらっしゃるのか、もっとこの人たちのことを知りたい。」
食事介助や洗濯などのお世話をさせていただく中で、そのように思った。
(実はお腹を壊して寝込んでしまい、予定していた期間ボランティアができなかったのが今でも残念です。)

日本に戻り、大学では各領域での実習が始まった。十分な睡眠もとれず病態生理の理解や記録に追われる日々であったが、精神看護学の実習は少し時間に余裕があり、患者さんの今までの背景や考え方を知ることができた。そして精神看護学の実習が、「もっとこの人たちのことを知りたい」とインドで感じたことを解消するきっかけにもなった。

「今までどのような気持ちで人生を歩んできた人なのだろうか。」
「今はどんなことに困っていて、悲しんでいるのだろうか。」
「その一方で大切にしてきた価値観や夢はなんだろう。」

少し変わった理由かもしれないが、患者さんの背景を知り理解することの「楽しさ」を発見し、思い切って精神看護の世界に飛び込んでみた。
精神科と聞くと、何か特殊性を帯びた身体科とは違うものであるという印象はまだ根深くある。しかし精神看護でもその人を全人的に捉えて理解するという姿勢は他の領域と変わりはない。

対象者理解は、一見簡単そうに聞こえるがとても難しく私もまだまだ学習中である。
医療者として対象を理解することには技術を要し、正しく理解できないまま、看護を実践しても対象者にとって不利益になることもある。

コミュニケーションや他者との相互作用を通して対象理解を深めていく精神看護の技術は、目に見えない技術のため、「精神科の看護はわからない」ともよく聞くが、だからこそ面白いのだと思う。

今まで出会った人や支えて下さっている人に感謝しながら、目に見えない精神科看護の技術を「楽しく」お伝えすることができるように、多くのことを吸収していきたいと思う。

看護コミュニティ

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