「なぜ?」と考えることをあきらめない

2020.02.01
小布施 未桂
  • 2020/02
  • 看護師:小布施 未桂

「あぁ、今日もうまくいかなかったなぁ」

看護師になりたての頃、10年以上も経験がある大先輩の看護師の方との帰り道で、その方がそっとつぶやきました。 その日、一緒に働いていた新人の私にとっては、大ベテランの先輩看護師は何もかもテキパキ完璧にこなしているようにみえたので、
「え? ◯◯さんでも、うまくいかないってことがあるのですか」と尋ねたのです。
「そうよ。あぁすればよかった。こうすればよかったって、もう毎日後悔ばかり。」と。
経験豊富で、なんでもこなしているようにみえた先輩看護師が自分と同じように悩んだり後悔したりしているという親近感と同時に、その姿勢に尊敬のような気持ちが湧き出たのを思い出します。

看護に「正解」や「答え」はあるのでしょうか。

状況は、そのつど変わります。そして当たり前ですが、患者さんは「今」を生きている人です。
Aさんにとって心地よいことが、Bさんにとっては違うことがあります。
同じAさんですら、タイミングが異なればその反応は異なることがあります。
反応が捉えられず、良かったのか悪かったのかわからない時もありますし、「あのとき、ああすればよかったのかな」と考えることはできても、実際に確かめることはできません。

今年度から教員となり、学生からは「じゃあ、どうすれば良いのですか?」って言われそうですが、残念ながら、看護とは、このようにするのが「正解!」というような唯一の答えがあるものではありません。〇(マル)をもらうことがゴールではないのです。

看護には、考えて悩んで挑戦してみたり、挑戦したけれど良かったのか悪かったのか「はっきり」しなくて悩んだり、なんてことを繰り返し、それでも振り返って次に活かそうと、もがいているような側面もあるのだと思うのです。
その中で、誰かの価値観ではなく、自分なりの看護を少しずつ育んでいくのではないでしょうか。

何度見ても味わい深いアニメーション映画「キリクと魔女」(ミッシェル・オスロ監督)では、小さなキリクが「なぜ?どうして?」と問いかけ続けます。「なぜ魔女はいじわるなの?」という問いかけに、「それは魔女だからさ」と大人たちは答えますが、その答えに小さなキリクは決して納得しません。

「着替えなきゃ」「痛い」「帰りたい」と訴える患者さんをみて、「あの患者さんは認知症だから」「あの患者さんはいつも触ると痛いというから」と自分を納得させて、考えることをあきらめるのではなく、「なぜ?」「どうして?」と、もがきながらも考え続ける看護師になってほしい、あの頃の先輩のように悩んだり後悔したりしながらでいいのだと、自戒を込めて学生たちに伝えていきたいです。

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