生涯で3回目の涙...?

賀数勝太
  • 2020/03
  • 教員・看護師:賀数勝太

みなさんはこれまで流した涙にどのような想いが込められているか振り返ったことはあるだろうか?
ここでは,涙を通して"ひとの生死"や"病めるひとへの看護"について自分自身の考えと私のこれまでの人生史の一部を紐解きながらお話ししたい.

私は,ひとが生きるということは"自分以外の誰かに自分のことを想ってもらうこと"だと考える.

本学は看護を"人間と環境との相互作用により,最適な健康状態を生み出すことを目指す働き"としており,自分自身の現在における看護観も同じく,対象とその環境との相互作用に焦点を当てて看護として何ができるのかを考えることが最も重要だと考えている.
特に,1人のひとが社会生活のなかで生きていくということは誰か,または何かから影響を受け,影響を与えるということは必然であり,ましてや健康障害が生じた場合は,その相互作用の過程や結果を医学的,社会学的,倫理的側面などの多角的な視点からアセスメントして対象の望む最良の状態に導くことが看護の重要な使命だと考える.
ここで,対象の主体性も重要だが,私が殊に大切にしたいことは,対象と看護師の相互作用による結果が両者の望む最良の状態になるように心がけることである.お互いに十分にコミュニケーションをとり,考えを共有し,同意や妥協など様々な終着点があると思うが,両者が「よかった」と思えるそのプロセスこそが看護として対象のよく生きた人生そのものにつながるのではないかと考える.

ここまで真面目に看護に対する私の想いの丈をお話ししたが,「涙,1滴もないですけど?」と思われた方もおられると思うので,このように至った最もらしい理由のために私の人生史を紐解いていきたい.堅苦しさも一緒に...

1滴目の涙:私がICUで受け持った身寄りのない70代の終末期の患者.CPA(心肺停止状態)で発見され,full codeで蘇生処置を行い加療していたが,脳死状態のためにDNAR(あらゆる心肺停止に対して蘇生処置を行わないこと)となり,ICUでの継続治療から一般病棟へ転棟となった.宗教を通じた友人が1人いたが,「本人もこれ以上苦しいことは望まないだろう」と医療者との協議が行われている中で,私の目から涙が溢れた."この人はどれだけよく生きられたのだろうか"と.新人Nsとして流した初めての涙であったことを今でも覚えている.

2滴目の涙:1滴目と同じくICUにて窒息による蘇生後脳症で集中治療中の幼児前期のこどもとご家族の関わりでのこと.「私たちが食べ物に注意しておけばこんなことにはならなかったのに,本当にごめんね,〇〇ちゃん...」.家族の言葉に私は自分の頬を伝う一筋の涙を拭いて,背中をさすることしかできなかった."この子と家族がこれからを生きる上で自分に何ができるのだろう"と悩みながら.臨床2年目のことだったと思う.

3滴目の涙:結婚した末っ子の妹の式の結びに,両親ときょうだいへの感謝の手紙の朗読中にホロリ.長男たるものここで泣いてはと思っている最中で,横目に見たすすり泣く弟ともう1人の妹の姿で私の目は決壊した."あいつ,普段はそんな感じ出さないのに,ここでありがとうはズルいよな"と他の2人も同じように感じたと思う.ほんの数ヶ月前のこと(だったと思う).

私はこれまで人前で泣くのは恥ずかしく,自分が泣く時は親の死に目と我が子の誕生の瞬間だけだと思い続けていた.そんな中,昨年末に息子の誕生に立ち会い,壮絶な出産を終えた妻と大人しくじっと見つめてくる息子の姿に,私の目の前の景色は二重三重にぼやけた.この光景をしっかりと目に焼き付けたい自分の思いとは裏腹に溢れる涙に邪魔されて.

考え直すと生涯で3回目の涙は息子の誕生の時で,妹の結婚式の件は4回目となる.
いやちょっと待てよ...
他にも前任校での送別会や,中学校の卒業式など泣いていたような...
たくさん出てくる...
あれ,泣きすぎではないか.計算が合わない.

最近,事あるごとに目の湿度が高くなる自分に対する恥ずかしさも薄れてきた(それにしてもYou ○ubeで「感動 CM」と検索履歴があることは恥ずかしすぎて誰にも言えない)が,これは私の感性が様々な経験とともに,自身を取り巻く環境との相互作用の中で変化してきたからだと実感する.

そして,涙とひとの想いは強くリンクしているとも思う.

喜怒哀楽,悔しい時,びっくりした時など様々に涙は流れるが,その涙とリンクしている想いはなんだろう.

ひとの記憶ほど曖昧なものはないが,それほどに尊いものもないと思う.
そこにはたくさんの想いが詰まっているから.

みなさんも,記憶を頼りに自身の涙の軌跡を振り返ってみてはどうだろうか?
そこから見える死生観や看護観は一体どんなものなのか,ぜひ私にも教えてほしい.
私の目の湿度調節機能が破綻する恐れもあるかもしれないが,それでもいい.

看護コミュニティ

ページ評価アンケート

今後の記事投稿・更新の参考にさせていただきたいので、ぜひこの記事へのあなたの評価を投票してください。クリックするだけで投票できます。

Q.この記事や情報は役にたちましたか?

Q.具体的に役立った点や役に立たなかった点についてご記入ください。

例:○○の意味がわからなかった、リンクが切れていた、○○について知りたかったなど※記入していただいた内容に対してこちらから返信はしておりません

最大250文字