自宅で介護するコツ

家族と地域社会で介護を支える

家族と地域社会で介護を支える

「いつかは家族を介護する日が来る」と覚悟はしていても、実際に世話をする立場になると、戸惑うことも多いと思います。
自分の生活のリズムを変えなければならないという不安もあるでしょう。
介護の経験の少ない人は、どのように世話をしたらいいのかわからず、さらに不安になってしまうものです。
しかし、介護はだれかの犠牲のうえに成り立つものではありません。まず肩の力を抜いて、ゆとりある介護プランを立てましょう。お年寄りのお世話はゴールの見えないマラソンのようなものです。1人で全力疾走していては、お世話は長続きしません。介護を長く続けるためには、借りられる手は借りて、1人でできないことは「できない」と割り切って、周囲の支援を得ることを考えましよう。そのためのサービスにも、いろいろなものがあります。

家族の間で介護の分担を決める

在宅で世話をすることが決まったら、家族で話し合いをして、介護の態勢を整えておきましょう。
また、家族だけではなく、親歳などの支援も必要です。現在のお年寄りの状態や先の見通し、困っていることなどを率直に打ち明けて、協力してもらいます。
毎日のお世話を手伝ってもらうのは無理でも、日曜日の数時間だけ介護を代わってもらったり、病院への送り迎えに車を出してもらうなど、助かることも多いはずです。
口に出して言わなければ、相手に伝わりません。「こんなことをしてほしい」とお願いをしてみましょう。
経済的な面で協力するという申し出があった場合は、喜んで受けていいはずです。
また、近所の人や友人からお手伝いの申し出があれば快くお願いして、買い物や留守番などを頼むとよいでしょう。

介護システムを充分に活用する

在宅介護を支援する公的介護保険制度は平成12年4月からスタートしました。
また、自治体サービスや民間のサービスなども、整備が進んでいます。
それらの制度をよく知ったうえで、遠慮せずにサービスをしっかりと活用します。
介護者個人にかかる負担を少なくすることを考えましよう。

介護の中心になるキーバーソンを決める

キーパーソンとは、医師との連絡を取り合ったり、どういう形で世話をしていくか、経済的な面も含めて重要なことを決定する人のことです。主介護者がキーパーソンを兼ねることもあります。
キーパーソンには体力があり、的確な判断ができて経済力のある人が適しています。もちろん、お年寄りの気持ちをよく理解できる人でなければなりません。
また、介護についてあれこれと文句を言ったり、日を出してくる親戚などがいる場合もあるので、そのような人たちを説得することができる立場の人がよいでしょう。

活用可能な公的制度と相談窓口

医療・福祉制度

医療費の支給

老人保健法により、70歳以上、あるいは65歳以上70歳未満で寝たきりなどの認定を受け、医療保険に加入していて受療したときには、医療費の支給が受けられます。

医療費控除

医療費の給付対象になっているお年寄りは、医療や介護にかかった費用について税制上の控除があります。在宅医療用器具(吸引・吸入器)や松葉杖、補聴器などの購入費も控除の対象です。各市区町村の担当課で相談しましょう。

老人福祉手当て

寝たきりや認知症のお年寄りに対して支給されるものです。支給額や基準は自治体ごとに異なるので、市区町村の担当課の窓口で確かめてください。

市区町村役場の高齢者福祉課

ヘルパーの派遣や日常生活用具の給付。貸与、福祉機器の貸し出し、入浴サービスや老人福祉施設など、その地域で行われている介護サービスに関する情報が得られます。

保健所、市町村保健福祉センター

在宅での寝たきりや、認知症のお年寄りの医療、保健福祉全般に関する相談窓口です。
保健師が床ずれの処置、福祉機器の選び方などを指導したり、介護する人の健康に関する相談も受け付けます。栄養士は栄養相談、食事指導を行います。
理学療法士は、家庭や保健センターでのリハビリテーション指導を行います。

地域包括支援センター

地域包括支援センターは、高齢者の生活圏域で保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員(ケアマネジャー)、を配置して、多職種が専門知識や技能を活かしながら、地域での各種サービスや住民活動を結びつけ、地域のネットワークを築くこと、また個別サービスのマネジメントも行う地域の中核機関です。高齢者の介護で困っているとき、近所の高齢者が虐待されているのではないか心配があるとき、介護保険を使って在宅サービスや施設サービスを受けたいとき、要介護認定はされていないが、介護が必要な状態にならないよう、介護予防サービスを受けたいときなどは、地域包括支援センターに相談するとよいでしょう。

社会福祉協議会

社会福祉士、介護福祉士、ボランティアなどで組織されています。ホームヘルパーの派遣、入浴・給食サービス、おむつの支給、ベッドや車椅子など、日常生活用具の貸し出し、友愛訪問などを行っていて、相談にのってくれます。

高齢者総合相談センター(シルバー110番)

各都道府県に1か所あります。電話1本で、在宅介護に関する悩みや相談、住宅改造や老人ホームの情報など福祉全般にわたる相談に答えてくれます。名前を言う必要はなく、場合によっては面接も可能です。

聖路カロ看護大学高齢者在宅介護相談(聖路カロ看護大学2号館)

毎週火曜日 午前10時~12時(予約制)TEL・FAX 03(6226)6387 高齢者の認知症ケア、リハビリテーション、呼吸障害のケア、栄養相談ほか、保健師、看護師が面談してご相談にあたります。

在宅介護サービスの種類

家族だけで介護していると、介護者も心身ともに疲れてきます。在宅介護サービスを上手に利用して、体を休めることを考えましょう。
これらのサービスを活用すると、家に閉じこもりがちなお年寄りが人と交流する場ができ、気分も明るくなります。介護者同士の交流もはかることができます。

介護を楽にするサービス

デイサービス

65歳以上で、身体が虚弱な人、認知症。送迎バスで老人保健施設などに通い1日過ごす。健康チェックやリハビリ、ゲーム、趣味の講習などを行う。施設によっては、入浴サービスもある

ショートステイ、ミドルステイ

65歳以上、寝たきりのお年寄りで、家族が病気や冠婚葬祭、旅行などで一時的に介護できないときに、特別養護老人ホームや老人保健施設でお年寄りを預かリケアします。送迎あり。シヨートステイは1週間程度。ミドルステイは1~4週間程度

ナイトケア

夜間の介護ができない場合、原則7日間を限度に、お年寄りを夜間のみ預かリケアします。送迎はなし

ホームヘルプサービス

高齢、あるいは65歳以上で日常生活に支障のあるお年寄りのいる家庭に、介護福祉士あるいはホームヘルパーが家に訪れて、家事や介護を行う

巡回型24時間対応型ホームヘルプサービス

認知症や寝たきり独居で要介護のお年寄りが対象で、夜間トイレに起こす、おむつ交換など、時間と内容を特定して夜間のケアを行う(1時間1000円前後)

訪問看護

家庭での医療処置、褥創の手当て、清潔の援助などが必要な人に、保健師や看護師が定期的に家庭訪問し、お年寄りの健康管理と介護の指導等を行う

入浴サービス

65歳以上の寝たきりのお年寄りを対象に、浴そうを用意し、入浴を援助する。

訪問歯科診療

寝たきりなどのお年寄りを対象に、歯科医、歯科衛生士が自宅を訪問し、歯科診療を行う

お年寄りへの接し方

思いやり

お年寄りは、職場からの引退、子どもの自立、経済力の低下、配偶者との死別など、さまざまな喪失感を味わっていることが多いものです。
さらに、身体機能が衰えて介護が必要になると、悲観的になりがちです。「これから先はどうなるのだろう」という思いや、死に対する不安もあるでしょう。
ひがみっぽくなったり猜疑心にとらわれて、世話をする人につらくあたることがあるかもしれません。
毎日の介護に疲れてくると、お年寄りへのいたわりの気持ちを忘れがちですが、少々の愚痴は聞き流し、思いやりを持って明るく接するようにしましょう。

お年寄りのベースに合わせる

年をとると、筋力が衰えて動作が鈍くなります。また、忘れっぼくなって、とっさに言葉がでなくなることもあります。目や耳の機能も落ちてきますから、意志の疎通がうまくいかなくなることもあるでしょう。
そんなときに「早くしてください!」などと冷たく扱われたら、頑張ろうという気持ちや、できることは自分でやってみようと言う気持ちがなえてしまいます。
世話をするときはお年寄りのゆったりしたテンポに合わせます。自分のペースで世話をされることで、お年寄りも介護してくれる人に深い信頼を寄せるはずです。

家族の一員として触れ合いを持つ

お年寄りにとって、自分の家で介護してもらえるということは、安心できる生活です。家族がそばにいて、声をかければすぐに来てもらえるということは、お年寄りにはうれしいことです。
ベッドでの寝たきりの生活は、孤独になりやすいものです。家族はできるだけ、お年寄りと共有する時間をもてるように工夫しましょう。

敬意と感謝の気持ちを忘れずに持つ

いくら体が衰えたといっても、お年寄りは人生の大先輩です。赤ちゃん扱いしたり、見下した態度で接しては、心が深く傷つきます。
お年寄りは、人生を生き抜いてきたことや、家庭をきづいてきたことに大きな誇りを持っています。体が不自由なお年寄りは、特にそのようなプライドが高いものです。
お年寄りの現在の姿だけを見るのではなく、長い人生経験を持つ先輩として敬い、自尊心を尊重しましょう。

介護する人も日ごろの健康管理を忘れずに

十分な世話をするためには、介護する人が心身共に健康であることが大切です。
介護による精神的、肉体的な疲れから、自分で気がつかないうちに健康を害することも多いのです。特に、介護する人が高齢者の場合は、周りの方から声をかけることも必要です。
まず、定期的に健康診断を受けましょう。最低でも、半年に1回の健診を基本にします。介護の負担から起こる肩こりや腰痛を解消するためには、マッサージを受けたり、軽いストレッチを行うなどの疲れや痛みをためこまない工夫も必要です。

自分をとりもどす時間をつくりましょう

一日中介護に携わっていると、いつの間にか心の健康を損ねてしまうことがあります。年寄りの世話にイライラしたり、眠れない、食欲がないなどは心の病気の兆候です。デイサービスやショートステイを利用して、自分の時間を確保することを考えましょう。自由になる時間を持つだけで、ストレスはかなり解消します。
また、計画的にショートステイを組み込んだり、月に何日か親戚に介護を代わってもらうなどして、自分の趣味や余暇の時間を確保してもいいでしよう。「介護する側が健康でなくては」という気持ちの切り替えが必要です。

家から一歩出て情報交換と励まし合いを

お年寄りの世話をしていると、世話をする人も家の中に閉じこもりがちになります。
そこで、介護者の会や地域で行われているサークル活動に参加してはどうでしよう。地域ごとに、在宅介護者の集いや、認知症をかかえる家族の会など、多くの団体があります。介護者でなければわからない苦労を分かち合ったり、情報交換の場にもなります。思い切って参加してみましょう。

介護技術を学んで負担を軽減

専門家の介護アドバイスを受けると、具体的なコツが覚えられるので、介護に自信が持てるようになります。保健センターで開かれる介護教室や、在宅介護支援センターなどにいるケアやリハビリの専門家のアドバイスを受けましょう。

出典:亀井智子、南川雅子、久代和加子:最新やさしくわかる在宅介護 ―負担を減らし、明るく過ごすために
日本文芸社,2001
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