▲入院中の父が突然、幻覚・記憶喪失に。せん妄を患った父親の介護体験記
主な対応と工夫 日常生活の工夫
室内全体の環境整備へのヒント 認知症の方の食事と食事介助
認知症の方を家庭で介護するには、認知症の方の状態に合わせて方法を選び、工夫していくことが大切です。当人の状態に合わせて必要なところを参考にしてみて下さい。また、個別相談によるアドバイスが必要であれば、「認知症お役立ちサイト」にある個別相談(予約制)を利用してみて下さい。
主な対応と工夫
記憶障害への対応
固執への対応
見当識障害による不安への対応
幻覚・妄想への対応
徘徊への対応
不潔行為
攻撃的言動
性的言動
記憶障害への対応
・ 刺激のある一日の生活を工夫しましょう
・ 記憶しておくことへの工夫をしましょう
例えば、大きなカレンダーを目に触れるところに貼り日にち曜日など確認しやすくします また、予定などを書き込むようにし、一緒に折に触れ確認するとよいでしょう。
季節感のある話題の会話をする、記憶ノートを活用する、などがあります。
固執への対応
・ 忍耐をもって接しましょう
見当識障害による不安への対応
・ 受容と共感的態度で接しましょう
受容していることを表現するために、相づちを打ったり、頷いたり、言葉を繰り返しながら本人の話しを聴きましょう。感情を正確に把握して、言葉で返しましょう
例:「今○○だから怒っているのね」「心配なのね」
・ 怒ったり、叱責したりしない
・ 穏やかだか、刺激のある生活を支援する−楽しく、人と接するような環境、役割をもてる環境を作る
・ 心地よい生活空間を工夫しましょう
幻覚・妄想への対応
置き忘れを「なくした」でなく、「盗られた」と表現することがあります、また、嫉妬妄想といって、:妻の不貞を信じ、攻撃することもあります。
・ いじめられ妄想:「嫁にご飯も食べさせてもらえない」は孤独感から生じることがあります。
・ 本人が見えているもの、感じているものを把握しましょう。しかし、あまり細かく質問しすぎないようにしましょう。
・ 妄想を増強するので、否定するのは逆効果です。
・ 受容的態度で黙って聞き、肯定も否定もしないようにしましょう。
・ 無くした物が見つからないと不安がるようなら、「一緒に探しましょう」と対応し、本人に見つけてもらうように普段から保管しておいて、必要に応じて差し出したり、見つけるように誘導したりしてみましょう
徘徊への対応
徘徊とは、認知症高齢者が無目的に歩き回る様をいいますが、本人にとっては意味があって歩いているのです。徘徊には次のような分類があります。

(1) 外出すると道や場所が分からなくなり、迷子になることがあります
(2) 転居や入院などで、馴染みのない場所に移ると、見当識障害と不安から徘徊することがあります。
(3) 興奮した状態(せん妄)で歩き回ったり、ぼんやりとして活動性が低下することがあります。夜間に起こるものを夜間せん妄といいます。
(4) 脳の器質障害によって現れる症状の一部です。いつもと同じような軌跡を描き、早足で、堅い表情で、前に人がいても押しのけるように歩くのが特徴です
(5) 「帰って家族の夕飯の支度をしなければ・・」など、最も生き生きと生活していた時へ戻りたいという願望から生じることがあります。

・ 対応の基本は、不安を減らすこと(場所を覚える、環境に親しむ、今いる場所が楽しい所になる、他にどこも行くところがないと思うようになるなど)
・ 今いる場所がわかるように表示する
・ 廊下や部屋を明るくして不安を少なくする
・ 運動、散歩など興味を引くものに注意を向ける
・ 楽しみや仕事を提供する
・ 外に出て気分をほぐす
不潔行為
便・尿など排泄物をもてあそんだり、まき散らしたりすることがあります。
身体拘束は禁物! 原因を探り、対処しましょう。 
・ 蒸れる、暑い、かゆい
→おむつをはずし、言葉や行動、サインで尿意を把握し、トイレ誘導します。
・ 皮膚の疾患がある場合は皮膚科に受診して治療をします。
・ 残便・残尿による不快感があるために、手で便を取り出そうとする
→水分摂取を増やして、腹部マッサージや温湿布で排便を促してみます
・ 排便後の後始末ができない
→居室、トイレでの様子や臭気を早期に把握して対処します。見えるところにトイレットペーパーを置くと良いでしょう。自分で処理しようとした行為を認めることも大切です。
・ トイレまで間に合わない
→排尿・便のリズムやサインを見つけ、トイレ誘導します。
夜間は寝室にポータブルトイレを置くのもよいでしょう。
・ 汚れた衣類をタンスや押入れに入れる
→羞恥心やプライドからそうしているため、決して怒らず、本人がいないときに処理します。
・ 誤認や空間失認(トイレの場所が認識できない、ごみ箱に放尿する)
→ポータブルトイレを見えやすいところに置き、「便所」と書いて貼っておきましょう。
攻撃的言動
感情のコントロールがうまくいかないため、一度怒り出すとひどい言葉で非難したり、暴力をふるったりすることがあります。要因を調べて取り除きましょう。
・ 状況判断や理解ができないで怒り出す
→少しの間、冷静に様子を観察していると、しばらくすると何に腹を立てていたのか忘れてしまい、元の状態に戻ることがあります。
・ 無理矢理何かをしようとしたとき(声をかけずにおむつ交換したりするとき)、手をはね除けたり、 大声で怒鳴られたりする)
→何かをする前には、必ず声をかけましょう。
性的言動
体の自立度の高い認知症高齢者で、自己抑制が効かない場合生じやすいといわれています。
施設に入所者すると、男性の約3割、女性の約2割に体に触れる、卑猥なことを言う、布団の中に入るように言う、風呂を覗くなどの性的なトラブルがあるという報告もあります。
・ 寂しさ、不安からこのような行為に及ぶことを理解しておきましょう。
・ 自尊心を傷つけないように、できれば冗談を交えて対応しましょう。
・ 強い口調、拒否の態度は混乱や不安を招き、暴力的にさせることがあります。
・ 淋しさのためにスキンシップを求めている場合もあるため、体や足をマッサージしたり、両手を握ったりすることで対応してみましょう。
・ 夜間は嫁の寝室にかぎをかけるのも一つの方法です。