心臓は小さな臓器であるが,大量の化学エネルギーを利用し,ポンプとして機械的な仕事をこなす臓器である.心臓は ? 分間に ? L もの血液を絶え間なく送り出す.これには ? 日に ? kg の ATP を消費する.大量の ATP を産生するためには,エネルギー基質としてのブドウ糖,脂質などが必要であるが,さらにポンプを効率よく動かすためには,酵素の補因子としてのビタミン,ミネラルが必要である.心臓は他の臓器より多くのエネルギーを使用し,そのため微量栄養素の欠乏によるエネルギー代謝の低下は心機能の悪化をきたす.また,収縮を行う収縮タンパク質なども次々と新しいものに作り替えられていくため,材料としてのタンパク質も必要である.タンパク質の合成にもエネルギーおよび微量栄養素が必要である.心不全における微量栄養素の欠乏症については多くの研究がある.表 1 に,代表的な微量栄養素の心不全に対する臨床試験の結果を示す.微量金属元素22種・コエンザイム Q??,L?カルニチン,ビタミン B 群はエネルギー代謝に関係が深く,これらのいずれかの単独の欠乏でも心不全を生じることは古くから知られている.ほとんどの栄養素については,大規模なランダム化比較対照試験が行われていないため,結論が出ていない.いくつかの研究では長期間の投与が安全で心機能の改善がみられるとの報告がある.しかしながら,効果がないという報告もみられ,今後の研究課題である.その他,単独の栄養素の補給では効果がないことより,マルチミネラル,マルチビタミンのサプリメントが有効であるとする報告もある。