3-1.HOTとは?

私たちは、いつも呼吸をして、大気中から体内に酸素を取り入れ、不要な炭酸ガスを吐き出して生きています。しかし、この生命維持にはなくてはならない酸素は、体内で保存することはできません。肺の中では蓄えられますが、たったの数分間しかもちません。これが他の栄養素と全く異なるところです。

静かに寝ているときに必要な酸素の量は1分あたり約20ml(ミリリットル)といわれます。激しい運動時や高熱があるときは、安静時の10倍もの酸素量が必要です。これらに必要な酸素は全て大気中から肺を介して体内に取り入れられ、生体内のエネルギーを作り出しています。

大気中には約21%の酸素がありますが、それだけでは不足することがあります。肺や心臓の病気、あるいは酸素を運んでくれる血液中のヘモグロビンの異常を起こしている場合です。そういう状態になったときには不足する酸素を補わなければなりません。

酸素療法とは、酸素不足、つまり低酸素血症に陥っている組織細胞に、酸素を吸入して十分な酸素を供給し、組織細胞が正常に機能する酸素量に保ち低酸素状態を改善することなのです。


自宅で酸素を吸う −在宅酸素療法の目的−




「自宅で酸素療法を行いましょう」と医師から言われても何も驚くことも心配することもありません。薬を飲むのと同じように医師の指示に従って酸素療法を行えば、体を良好な状態に保持するのにずいぶんと効果があるでしょう。

肺気腫や慢性気管支炎、肺結核後遺症など、十分な治療を受けた後でも、肺の機能障害が後遺症として残りますと、自然な呼吸では酸素の取り込みと炭酸ガスの排出が十分にできなくなり、慢性呼吸不全状態を起こす場合も少なくありません。

これまでは、酸素の吸入療法のためだけに、長期にわたって入院されていた方もいましたが、今では、このような慢性呼吸不全の患者さんが、定期的に医師の診察を受けながら、酸素供給装置を自宅や職場に持ち帰り療養します。
このことを在宅酸素療法といいます。

英語で”Home Oxygen Therapy”といい、HOTともいっています。

在宅酸素療法が病気の改善に役立つこと、健康保険で認められるようになったこと、家庭で使える簡単な器械ができたことなどにより、ここ10年間に急速に普及しすでに13万人近くの人が実施しています。

在宅酸素療法の一番の目的は、患者さんに快適な日常生活を過ごしていただくことにあります。趣味を楽しみ、旅行に出かけ、家族と共に過ごすという、ごく普通の生活に戻っていただくこと・・・・・・・それを目的としています。