15.よくある質問・疑問

質問1. HOTを続けると慢性呼吸不全は治りますか?
質問2. HOTをする・しないで生存率はどのくらい違いますか?
質問3. HOTを始めたらもうやめることはできないのですか?
質問4. 一日中酸素を吸入しなければならないのですか?
質問5. HOTの設備は全てを購入しなければなりませんか?
質問6. どのような医療助成制度がありますか?
質問7. HOT実施者は車の運転をしてもよいですか?
質問8. HOT実施者が飲酒をしてもよいですか?
質問9. 喫煙者がHOTを始められますか?禁煙しないと無理ですか?
質問10. HOT実施者が風邪をひいた場合の注意点はありますか?
質問11. HOT実施者は市販されている薬(風邪薬等)を服用してもよいですか?
質問12. 子供でもHOTができますか?
質問13. 一人暮らしの場合のHOTの注意点は?
質問14. 老人ホームでHOTはできますか?
質問15. 地震など不測の事態が起こった場合はどうすればよいですか?
質問16. HOT実施者の会のようなものはありますか?
質問17. 健常者が健康のために酸素を吸いたいのですが?

質問1.

HOTを続けると慢性呼吸不全は治りますか?
回答1. HOTは慢性呼吸不全の方の低酸素値症を改善し、息切れの改善や運動能力の向上、生存期間の延長に貢献することができますが、慢性呼吸不全という病気そのものを治す治療法ではありません。慢性呼吸不全とつき合うための治療法です。

質問2.

HOTをする・しないで生存率はどのくらい違いますか?
回答2. イギリスのMRCという医学研究グループの報告によれば、慢性呼吸不全をもつ人に一日15時間以上の在宅酸素療法を行ったグループと、行わなかったグループで生存率を比べたところ、在宅酸素療法を行ったグループの生存率が高かったとされています。また、アメリカのNOTTという在宅酸素の研究グループの報告に次のようなものがあります。24時間の酸素吸入と夜間だけの12時間の酸素吸入を行った2つのグループの人たちの生存率を比較したところ、24時間の酸素吸入を行ったグループの人たちの1年生存率は88.1%、2年生存率は77.6%でした。一方、夜間だけ12時間の酸素吸入を行ったグループの人たちの1年生存率は79.4%、2年生存率は59.2%で、これらのデータから24時間の酸素吸入を行う方が長期に生存できる割合が高くなるといえます。

質問3.

HOTを始めたらもうやめることはできないのですか?
回答3. 在宅酸素療法を始めるためには、いくつかの基準が決められており、それを満たさなければ保険適応にはなりません。
その基準とは、動脈血酸素分圧が55Torr以下の者、および動脈血酸素分圧が60Torr以下で睡眠時又は運動負荷時に著しい低酸素血症をきたす者、肺高血圧症、慢性心不全で睡眠時無呼吸がある場合です。HOTを始めると、これらの方々の息切れはかなり改善され、運動能力が改善され、息切れによる不安感などが軽くなりますので、生活の質は向上するといえます。HOTをやめてしまうと、低酸素の状態に戻ってしまいますので、自覚症状が現れ危険です。自己判断でHOTをやめることは避けましょう。

質問4.

一日中酸素を吸入しなければならないのですか?
回答4. HOTの処方は酸素流量、酸素使用時間、酸素供給器の種類から成ります。酸素の流量は0.1・〜8・位まで個人の低酸素の状態に応じて決められます。日中、夜間睡眠時、運動時に対し、別々の酸素流量が決められます。酸素使用時間は日中のみ、夜間(睡眠時)のみ、24時間の3種類。酸素供給のための機器には、吸着型酸素濃縮器、液体酸素、酸素ボンベがあります。酸素の処方は一人ひとりの必要に応じて決められます。24時間の酸素吸入が必要な人もあれば、夜間睡眠時だけ酸素吸入が必要な人もあります。酸素の処方を決めるときには廊下歩行などをしたときの酸素飽和度の変化、睡眠時の酸素飽和度の変化などをみて、どの位の時間、どの位の量の酸素吸入が必要であるかを決めていきますので、24時間酸素吸入が必要であると説明を受けた場合には、一日中酸素吸入することが必要となります。そのためには自宅での酸素供給器の置き場所をよく考え、浴室やトイレ、庭などに酸素の管が届くようにします。また、外出時のための携帯用酸素の用意を行います。

質問5.

HOTの設備は全てを購入しなければなりませんか?
回答5. HOTは保険が適用されます。HOTに必要な酸素濃縮器、チューブ類、鼻カニューラ、携帯用酸素は全て保険が適用されます。購入するのではなく、医療機関と契約している酸素業者が機器類をご自宅に届けます。この機器をレンタルで使用する形になります。費用の負担は、酸素濃縮器と携帯用酸素ボンベを使う場合で、健康保険の本人の場合は3割負担(24,330円)、老人保健の場合は1割負担(8,110円)(高額所得者は2割(16,220円))です。医療費には自己負担の限度額が設けられています。
ただし、加湿水を必要とする酸素濃縮器の精製水の代金(月1,000円〜1,500円程度)と、電源を必要とする酸素供給器の電気代(月2,000円〜6,000円程度)は全て自己負担となります。

質問6.

どのような医療助成制度がありますか?
回答6. 健康保険のほかには、身体障害者手帳を取得した方には医療費助成制度、結核にかかった方には、結核予防法による医療費助成制度があります。

質問7.

HOT実施者は車の運転をしてもよいですか?
回答7. 車に携帯用酸素を用意すれば、車の運転自体に支障はありません。携帯用酸素ボンベを自転車にのせて自転車で出かけることも可能です。

質問8.

HOT実施者が飲酒をしてもよいですか?
回答8. 酸素を使用していても、楽しみは奪われる必要はありません。ビールをコップ一杯たしなむ程度でしたら問題はありません。ただし、使用している薬によってはその効果を増大させたり減少させる場合がありますので、医師や薬剤師に相談が必要です。

質問9.

喫煙者がHOTを始められますか?禁煙しないと無理ですか?
回答9. 酸素は物を燃えやすくする性質があり、タバコの火は鼻カニューラから出ている酸素に引火する危険性があるため、HOTを行っている人はタバコは厳禁です。
最近では、喫煙はニコチン依存症の現れであると考え、禁煙するためにはそれなりの本人の意思と禁煙補助剤(ニコチンパッチ、ニコチンガムなど)の使用、医療職によるサポートが必要とされています。喫煙により酸素飽和度はかなり低下します。また、タバコの煙にはタールが含まれ、タールには数千種類の化学物質、200種以上の有害物質、40種以上の発がん物質が含まれています。さらに副流煙はタバコを吸わない人にも悪影響を与えます。朝起きて30分以内にタバコを吸う人、一日一箱(21本)以上吸う人はニコチンへの依存度が高いと言われています。HOTを始める前にタバコはやめましょう。

質問10.

HOT実施者が風邪をひいた場合の注意点はありますか?
回答10. HOTをはじめてから留意しなくてはいけないものに、「急性増悪」というものがあります。これは、風邪などをひくことをきっかけとして、病状が急激に悪くなることをいい、症状としては息苦しさが増す、痰の量が増える、痰に色がつく、熱が出るなどがあります。急性増悪は予防が最も大切です。毎日ご自分の健康状態を観察して、風邪をひいたような兆候はないか、また酸素飽和度が下がっていないかなどをみます。
外出から帰宅した際にはうがい、手洗いを行い、人混みに出かけることは避けましょう。ご家族から風邪がうつることもまれではありませんので、風邪が流行するシーズンはとくにうがいなどをまめに行い、部屋を加湿しましょう。冬季インフルエンザが流行する前に、ワクチン接種をしておくことも大切です。
万一、風邪を引いてしまった場合には、痰を出しやすくするように水分を補給して、早めに受診し、処方薬を服薬しましょう。ご家庭で様子をみる方も多いのですが、受診のタイミングを逃すと、酸素飽和度の低下による意識の混濁などを生ずることもありますので、我慢せず、早目に受診してください。

質問11.

HOT実施者は市販されている薬(風邪薬等)を服用してもよいですか?
回答11. 風邪薬の市販薬には風邪の症状に有効な様々な成分が含まれていますが、その人個人の症状にあった処方薬とは異なります。薬にアレルギーをもっていてもそれを知らずに風邪薬を飲んでしまい、ショック症状を起こすこともあります。風邪であっても、喉の痛み、鼻水、熱、痰など症状は個人によって異なります。かかりつけ医の診察のもと、必要な成分の薬の処方を受け、調剤薬局の薬剤師から薬の作用の説明と、他の薬との飲み合わせの可否などについて、よく説明を聞いた上で服用することが肝心です。

質問12.

子供でもHOTができますか?
回答12. HOTの適応基準に年齢の制限はありません。先天性心疾患など、お子さんであっても基準を満たし、ご家族が介護できれば実施可能です

質問13.

一人暮らしの場合のHOTの注意点は?
回答13. お一人暮らしの方は、日常生活全般のこと、HOTに関すること、経済的なことなど役割を一手にこなすことになりますが、地域にある社会資源を活用して、一人で全てを抱え込まないように生活することが大切です。
日常生活での介護が必要な場合は市町村の介護保険担当課で介護保険の申請を行いましょう。
生活上の主なポイント
日常生活の家事支援:息切れが強く、外出、買い物などが大変な場合、介護保険制度を利用して訪問介護を受け、ホームヘルパーによる家事援助を受けると良いでしょう。
受診の支援:病院に受診するときには介護タクシーを利用すると良いでしょう。介護保険のケアマネジャーに相談しましょう。
心身の健康状態の観察:介護保険制度を利用して、訪問看護を受け、訪問看護師に呼吸音や心身の観察をしてもらうと良いでしょう。自宅で行う呼吸リハビリテーションについても指導を受けられます。
身体障害者手帳の取得:HOTを行う方は、身体障害者としての認定される場合があります。手帳の等級により、医療費の助成、JRの割引ほかの制度が利用できます。
緊急連絡先の明示:親戚、子ども、病院、酸素業者など、緊急時の連絡先を電話の近くに大きく書いておき、誰がみてもわかるようにしておきましょう。

質問14.

老人ホームでHOTはできますか?
回答14. ひと言で老人ホームといっても、様々な目的・種類の老人ホームがあります。
特別養護老人ホームは、介護保険で要介護と認定された方、認知症の方などで家庭で適切な介護が受けられない方の生活の場として機能しています。主に介護職の方が介護にあたっています。HOTを行うことができるかどうかは、各特別養護老人ホームで異なりますので、入所の前に確認しましょう。
介護老人保健施設は、病状が安定期にあり、病院を退院し、家庭に帰るまでの間の3ケ月間、主にリハビリテーションや看護・介護を行う場として機能しています。また、すでに家庭に帰った方の短期入所(ショートステイ)としても利用できます。ここでは介護職、看護師が介護にあたっています。HOTの実施については、可能な施設が増えているようですが、入所の前に確認しましょう。
経費老人ホームはA型・B型・ケアハウスの分類されていますが、各々利用者と施設長の契約に基づく入居となります。A型では食事が提供されますが、B型は自炊です。ケアハウスは入浴、食事サービスがありますが、ホームヘルパーにきてもらうことができます。HOTの実施については契約時に確認する必要があります。
有料老人ホームは民間企業などが10人以上の高齢者を入所させて、食事そのほか契約を交わしたことについてサービスを行うものですので、入居の前にHOTの実施について確認しておきましょう。

質問15.

地震など不測の事態が起こった場合はどうすればよいですか?
回答15. ご自身の酸素濃縮器、酸素ボンベ、家具などに転倒防止対策をとっていますか?
地震のとき酸素濃縮器が転倒してけがをされたケースがあります。
予備の酸素ボンベに酸素は入っていますか? 予備の酸素ボンベのバルブを開けて、酸素を使うことはできますか?
災害が起こってもあわてずに。停電した場合には、予備の携帯用酸素に切り替えます。また、近隣で火災が起こった場合には、携帯用酸素に切り替えて避難します。
避難所での生活は風邪を引く原因になったり、酸素濃縮器が使用できなかったり、プライバシーが守られずイライラするなど、HOTを行っている方には大きなストレスになります。避難所の看護師などに相談して、入院が可能であるか相談すると良いでしょう。

質問16.

HOT実施者の会のようなものはありますか?
回答16. 全国組織の呼吸機能障害者の団体として、もみじ会、低肺機能の会があります。病院によっては、病院が主催する患者会があります。また、全国の患者会の情報を集めたホームページがインターネット上に公開されていますので、それをみてみるのも良いでしょう。患者会は会誌発行、集会、相談への対応、病院の案内、親睦会(旅行など)、さまざまな活動を行い、HOTを行う人同士のつながりを大事にしています。
また、日本呼吸器障害者情報センターはNPO法人として情報提供を行っています。

質問17.

健常者が健康のために酸素を吸いたいのですが?
質問17. 酸素を吸う目的は何でしょうか? 健康な方は、血液中のヘモグロビンのなかに、100%近い濃度で酸素がとけ込んで、各臓器に酸素を運んでいます。この場合、さらに酸素を吸ってもこれ以上酸素はとけ込めません。あまり意味はないでしょう。