患者は何でも知っている
-EBM時代の医師と患者-

2005.03.21
患者は何でも知っている<br />-EBM時代の医師と患者-

J.A.ミュア・グレイ:著
斉尾武郎:監訳 丁元鎮・栗原千絵子・平田智子:共訳
出版社:中山書店 209p
発行年月日:2004年7月
税込1,890円
ISBN:4-521-65031-7

「知識は病の敵である」──これは本書の原作者J.A.ミュア・グレイがグラスゴー大学を卒業後、医師になって以来、モットーとしている言葉だそうです。彼はオックスフォード地方公衆衛生局長として世界初のEBMセンターをオックスフォード大学に設立し、またコクラン・センターの設立、出生前診断や乳がんのエビデンスに基づくスクリーニングプログラムの創設・運営にも携わるなど、常に医学的知識を臨床で活用することの重要性を訴えてきました。

本書は、"21世紀のヘルスケアは市民と医師が同格のパートナーとならなければならない"という考えから執筆されています。そのためには市民が自分で情報を収集・評価し、医療に対して自らの権利を認識するだけでなく、自らの責任を引き受けようとする「賢い患者」と、それをサポートする医師が求められます。またこれには医学情報を医師だけのものとするのではなく、その提供も不可欠です。

医療がパターナリズムからパートナーシップへと変換することを求められる今、本書は今後の医療のあるべき姿、医師-患者関係を知る上でとても参考になるでしょう。


本書は以下の4章からなっています。

第1章 「医学帝国の興亡」─医学的権力の進化論─
19世紀以降の医学的権力の盛衰、さらにインターネットが医療サービスの消費者にもたらした力について示されています。医師がいつから知的権威・道徳的権威・官僚的権威・カリスマ的権威の座にあり、それがどう変容したのかが端的に述べられています。

第2章 「医師は一日中何をしているのか?」
医師が一日をどのように過ごしているのか、診察の場で何を考え、どう判断しているのか。これらを知ることで、医師と患者の間の誤解や対立が少しは減るのではないでしょうか。

第3章 「かしこい患者のためのスキルと情報源」
患者が医師と責任を共有し、自分自身のケアをコントロールするために必要な情報源とそれを使うスキルについて示されています。また自己決定できない者、情報へのアクセスが困難な者がいることから生じる倫理的問題についても述べています。

第4章 「医療の新しいパラダイム」
これからの医療は、患者、医療従事者、ヘルスケア組織3者において取り組みの転換が求められています。患者中心の医療に向け、3者それぞれの視点から医療の新しい医療の輪郭が描かれています。

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