「自分にあうものを選ぶ時代」

江藤 宏美
  • 2005/02
  • 助産師:江藤 宏美

自宅でお産ができることをご存知ですか。その昔は(といっても40年程前のこと)、みんな家で生まれていたそうだけれど、今の時代に「何かあったらどうするの」という声が聞こえてきそうです。でも、知る人ぞ知る、家庭出産は少しずつ増えているようです。(年間2,200人くらいで、全体のお産の0.2%にあたります。)聞きなれた声、いつものにおい、見慣れた部屋で、家族に囲まれて新しい家族の一員を迎える空間は、お母さんと赤ちゃんにやさしい環境といえるのではないかと思います。仲間の開業助産師が、そんな家庭出産のほんの一端にたずさわる機会を私に与えてくれました。

  先日、自宅でのお産に呼ばれました。早朝のことで、道路はすいていてあっという間に産婦さんのお宅に到着しました。お部屋に入っていくと、産婦さんは頭のすぐそばにいる旦那さんの手をしっかり握って、数分おきにくる陣痛をのがしていました。陣痛の波が引いた時は目をつぶってウトウトしています。2人のお姉ちゃんたちも同じ部屋の中で机に向かいながら、時折、母親の気配をうかがっています。そして、陣痛のたびに赤ちゃんの頭の見える部分が多くなり、ピンポン球くらいから、卵の大きさへ、ゆっくりと頭全体が現れました。その後、赤ちゃんの生まれてくるタイミングを待って、陣痛を1回のがした後、全身がぷるんと生まれてきました。羊水のついたまま、お母さんのお胸にいきます。肌と肌がしっかり重なっている赤ちゃんは、最初に泣いて肺に空気が満たされると、その後はあまり泣かず、片目を少し開けて、とり囲んでいる家族をじっと見ているようでした。

  お母さんは、赤ちゃんを抱きかかえて「待ってたよー。」「かわいいねぇ。」と生まれたての我が子に向かって語りかけました。それから「お父さん、ありがとう。いてくれて本当に助かった。」と夫にも声をかけました。いい体験の中で、人はとても素直になって、とびきりの笑顔がうまれるんだよなと感じた真実の瞬間でした。

  家でお産をするということは、そんなに簡単なことばかりではなく、妊婦さんたち自身も正常の状態を保つために、妊娠中から腰をすえて、努力しています。むくみが出だしたら黒豆を食事の度に食べたり、夜更かしはできるだけしないように睡眠時間は確保したりしています。自分で選んだ家庭出産を遂行するために、自分に起こっていることは、しっかり引き受けて覚悟を決めています。その気持ちが大事なのだと思います。産婦さんの気持ちは、お産にもとても影響します。お産の3つの要素は、赤ちゃんやへその緒・胎盤、陣痛などの生み出す力、そして赤ちゃんが通ってくる産道といわれていますが、これに、産婦さんの産もうと思う前向きな気持ちが必要です。この気持ちを妊娠中からお産にかけて支えて、伴走するのが助産師の仕事だと思っています。

病院でも、クリニックでも、助産所でも、自宅でも、女性が自分らしくお産のできる場所を選んで、いい体験ができたらいいですね。その一端を担わせていただいたら、最高です。

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