赤ちゃんを亡くしたご両親とともに歩む セルフヘルプ活動

太田 尚子
  • 2008/01
  • 聖路加看護大学看護実践開発研究センター 天使の保護者ルカの会
  • 助産師:太田 尚子

体験者でない、一助産師の私が、流産・死産・新生児死亡(以下、周産期の死別)で、赤ちゃんを亡くした母親たちと一緒に活動をしたいと思い、セルフヘルプ・グループの門を叩いたのは、ちょうど5年前のことです。当時は、『誕生死』(三省堂)という体験者による手記が出版されたばかりで、看護者はこのテーマに関心を持ち始めてはいたものの、まだまだ、双方の認識の違いは大きく、体験者の方々は、医療者との間に大きな溝を感じておられました。それから、1年後、看護実践開発研究センターで「天使の保護者ルカの会」を立ち上げました。今回は、周産期に赤ちゃんを亡くされたご家族をとりまく状況に触れながら、助産師である私たちが、体験者とともに運営しているセルフヘルプ・グループ「天使の保護者ルカの会」の活動の一端をご紹介いたします。

妊娠中や生まれて間もなく赤ちゃんが亡くなってしまうということは、ご両親にとって、想定外であることも多く、大変大きな悲しみを伴うできごとです。また、このような死別は、社会のなかで隠され、語られることが少ないために、悲しみが理解されにくい状況があります。儀式などを通してコミュニティや親族とともに喪の作業が行われる死別に比べて、周産期の死別は、語る場がないどころか、語ることを禁止されたり、早く忘れるように促されたりします。そのためご両親は、子どもを亡くした悲しみ、怒り、自責感などの悲嘆感情だけでなく、子どもへの愛情を表現できない辛さや、社会のなかでの孤独という大きな苦悩を抱えておられます。「天使の保護者ルカの会」は、そのような辛い状況におかれたご両親に寄り添いたい、亡くなった赤ちゃんのことを語る場・苦悩を少しでも減らせる場を提供したい、そして、ご両親の語りからケアのヒントを得て、ケアの質の向上に反映させていきたいなどの想いを抱きながら、運営しています。

活動内容は、お話会、赤ちゃんの贈り物を手づくりする会、カラーセラピーなどです。お話会では、毎回3時間あまりをかけて、涙を流したり笑ったりしながら、体験や想いを語り合います。参加者からは、「ありのままの自分が表現できる」「聞いてもらえてうれしい」「泣いて気持ちが軽くなる」「他の人も同じだとわかった」「いろいろな体験から学ぶことができた」などの感想が寄せられています。同じ体験をした人に触れることによって、悲しみ自体に変化はなくとも、想いを共感し共有できることからくる癒しや、前向きな姿勢、生きる力が生まれるようです。また、赤ちゃんに贈り物をつくる会である「エンジェルキルト」や「ファーストステップシューズ」では、赤ちゃんに何もしてあげられなかったと感じているご両親に、赤ちゃんにして上げられることがあることを伝えたり、手作りしながら、赤ちゃんへの想いを深めたりする機会になっています。同じような体験をした人と、手づくりする場と時間を共有することで、たとえ赤ちゃんが亡くなっても、親になったことを共に感じたりする場です。その光景は、文字どおり、保護者会のようです。カラーセラピーでは、言葉にならない気持ちを色で表現していきます。色は言葉よりもストレートに気持ちを表現することができるようで、カラーセラピーで、気持ちがほぐれたあとのお話会では、ますます会話が弾みます。

「天使の保護者ルカの会」は、3年半の活動を通して、その活動範囲も少しずつ広がっていきました。それは、立ち上げの時の予想を超えるものでした。体験者とオープンに語ること、手を携えてともに運営することによって、助産師であるスタッフは、体験者が真に求めていらっしゃるケアの内容や、それが多様であることを教えていただきました。体験者の皆さまの語りは、赤ちゃんと死別したご家族や医療者に使っていただく冊子や、ケアに必要なキットの開発、看護師や助産師の教育プログラムの開発のための多くの示唆を与えてくださいました。また、「天使がくれた出会いネットワーク」という、全国のセルフヘルプ・グループの仲間もでき、悲しい体験から編み出した優しさあふれる多くの素敵な方々との出会いを経験しております。 

これからも「天使の保護者ルカの会」は、体験者とともに居ること、ともに歩むことを継続しながら、一歩一歩、前に進んでいきたいと思っております。

天使の保護者ルカの会
http://kango-net.luke.ac.jp/event/angel/index.html
http://plaza.umin.ac.jp/artemis/rcdnp/tenshi/index.html

看護コミュニティ

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