卒業生との再会に思うこと

  • 2008/05
  • 聖路加看護大学
  • 養護教諭:岩辺 京子

このところ、養護教諭であった時の卒業生と会う機会が多かった。

まずは、結婚式に招かれて以来の再会となった和江さん。出産後、離婚し一人で育てた息子が大学受験の頃だった(その後、合格の報せを受けた)。ニキビの悩みを理由にして保健室によく顔をのぞかせていた彼女は、毎年の年賀状で離婚したことや仕事を替えたことなどを知らせてくれていた。「今年こそ会いたいです」といつも書かれていてやっと会えた。大変な時、見守ることしかできなかったけれど、仕事も子育てもがんばり、自分の道を歩んでいる姿は眩しいほどだった。

春休みに会った由美ちゃんは、家庭での養育の条件が整わないため、私立の全寮制の中高一貫校に進学が決まった。「入寮する前に会いたい」と連絡があり、一日、お台場で過ごした。3年生で転校してきた当初、ネグレクトを受けたことによる独特の言動への対応に苦慮し、担任教師と共に小児精神科の主治医や臨床心理士と会ってアドバイスを受けたり情報を交換したりした。卒論で取り上げた当時聖路加大の学生(現在、J病院の看護師)も来てくれ、楽しい一日を過ごすことができた。今度会うのは夏休みだろうか?

4月に入って、大学を卒業し、就職して研修中の真理ちゃんと会った。当時の学校の同僚で「いのちの誕生」の授業では、妊娠した自らが教材となってくれた原先生も一緒だった。真理ちゃんは喘息発作で病院に何回入院したことか...読書の好きな子だった。
「前の夜発作が出て、登校しても気持ちが悪くて保健室で全部吐いてしまった時、先生が嫌な顔一つしないできれいにしてくれたのがうれしかったです。その後、おなかがすいている私に、暖かい紅茶と"ちょうどあったから"とクッキーをもらって食べていたら、同じクラスの子が様子を見に来て"いいなぁ"と言ったんですよ。先生は"内緒よ"って一個クッキーをあげたらその子はすごく喜んで二人の秘密にして教室にいったんです。」「そんなことがあった?」子どもは憶えているんですねぇ。

こんなことも言っていた。
「私たちは、身体や性のことをきちんと教わり質問にも真剣に答えてもらって本当に良かったと思っています。大学の時や会社の研修会に参加していてみんなは体のことを本当に知らないと思いました。今、少年犯罪とか自殺とかあるとあの子たちもちゃんと勉強する機会があったら命の大切さがもう少しわかって事件を起こさなくても済んだんじゃないかって思います。私たちはどの学校でもそういう勉強をしてきていると思っていたけれどそうではないということを知って驚きました。原先生が、妊娠してすぐに授業にゲストで来てくれて、お腹が少しずつ大きくなる様子やつわりのことを聞いたり、岩辺先生たちから身体の仕組みや働きを聞いて「すごい」って思ったりしたんですよ。出産後、その時生まれた若菜ちゃんを連れてきてくれましたよね。えー、もう中学生なんですか?みんなが自分たちの妹のような気がしてました。」「他の卒業生からも若菜ちゃん元気ですか?ってよく聞かれるのよ」と原先生。

行政の性教育バッシングの後、教育現場は性に関する教育には消極的である。科学的に学ぶ機会を保証しないで「性被害に注意」「いのちを大切に」「人に優しく」と掛け声をかけても商品化された性の情報があふれている中で、判断力は簡単には育たないと思う。

女性歌手の「羊水発言」がニュースになったつい最近、東大准教授 松田良一氏の意見を新聞で読んだ。日本と諸外国の教科書(生物学)を調べたところ、人の発生について詳しく述べられている外国の教科書に比べ、日本の教科書はほんの数冊簡単に述べられているだけであったという。羊水については保健体育でも殆ど見当たらないという。氏は、『ヒトを科学的に扱う教育の構築は緊急の課題であり、社会のミニマム・エッセンシャル(最低の要求水準)である。ヒトに関する正しい知識を学校で教えることの大切さを再認識してほしい。』と述べられている。長く子どもたちと関わってきた私も全く同感である。

私が、T小学校で、すべての先生方と学校ぐるみで「生と性の学習」に取り組んでいた時は「内容づくりや教材の準備など苦しかったけれど充実していて楽しかったですね。」と当時の同僚はだれもがいい、今も交流が続いている。

学校保健法第19条にある「学校には 健康診断、健康相談、救急処置等を行うため、保健室を設けるものとする」と書かれている保健室そしてそこにいる養護教諭の役割は、現在しごとの内容が拡大深化し、大きく変化している。子どもたちに教えられ、鍛えられて養護教諭として育てられることが、何と多いことだろうか。今回会った卒業生との再会で見られたように、何年も後になって子どもたちの中に私たちの願いがしっかり伝わり、育っていることがわかり感動したり、時に反省したりすることもある。まさに私たちへの本当の評価かもしれない。嬉しくもあり、怖くもあるこの貴重な学びから、養護教諭を目指す学生に何をどう伝えていけばよいのかが現在の私の課題である。

看護コミュニティ

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