朝を創るモーニングケア

大橋 久美子
  • 2010/05
  • 看護師・保健師:大橋 久美子

皆さんは毎朝をどのようにお過ごしでしょうか?不規則になりがちな現代ですが、今ここにきて朝起きて夜眠るという自然のリズムに沿った生活が見直されています。雑誌では「朝時間」なるものが特集され、ジョギングやヨガ、ガーデニング、英会話、婚活(!)など、早起きして朝から活動する元気な人が増えています。忙しい現代人の時間の有効活用の方略ともいえますが、こうした朝型生活は健康を支援する看護の立場からは大賛成です。

朝型生活は次の様な健康上のメリットがあります。まず、早朝の太陽光を浴びることで生体リズムがリセットされ、睡眠覚醒や体温やホルモン分泌などの諸々のリズム同士の調和がおこります。これは生体機能を正常化し健康の基盤をつくります。また、朝の運動は血液の循環を促進し、朝食は活動エネルギーをつくります。これらは体温を上昇させ、また交感神経活動を活発にします。さらに、朝から手足口を動かすことで脳が活性化し、記憶力・集中力・思考力が高まります。このように朝型生活での様々な習慣や趣味などは、一日を有意義に過ごすためのウォーミングアップとなるのです。

一方、病院の患者さんの朝の過ごし方はどうでしょうか。あるご家族が「うちのおじいちゃんはいつも朝に髭をそって、それでようやく一日が始まるの。髭剃りができなかった朝は、あまり目が覚めてないしご飯も食べてない。リハビリへの心構えや訓練の動きも全然違うのがわかります。」と教えてくれました。看護には「モーニングケア」という患者さんの朝起きてから朝食までの一連の生活行動を援助する技術があるのですが、早朝は看護師数が日中より少ないため、検温や採血などの業務が多い日などは、主におしぼりと歯磨き道具の準備といった簡素化した洗面介助になりがちです。しかし、患者さんの一日の療養行動を促進するためには、特に健康時のように自分で活動態勢をつくれない患者さんには、看護師がその方に応じた朝を創る必要があります。

私はモーニングケアの内容を再検討するために、整形外科病棟の入院患者さん達に早朝の援助で良かった内容や悪かった内容とその理由を聞く研究をしました。患者さんは自分でできない環境整備や身支度などの援助を心待ちにしていました。それは、入院して普段通りできなくなったことで、改めてそのかけがえのなさに気が付いたからです。また、目を覚ましてから「今日の体の具合はどうだろう」「今日の予定はどうだったかな」と不確かな状況におかれていました。それは、患者さんは普段以上に身体状態や今日の予定に敏感になっていて、なおかつ自分では調整ができないからです。私はこうした患者さんの朝の援助への要望をもとに、採光や整理整頓などの環境づくり、苦痛の緩和、普段の習慣に近付けた洗面や整容などの身支度、一日の予定の確認などを行うモーニングケアをつくりました。そして次の研究で、主におしぼりと歯磨き道具を準備するケアを受けた患者さんよりもこのケアを受けた患者さんのほうが、十分な朝の支度ができ、快適に起床でき、活力が高まった状態で主体的に朝食の準備にとりかかり、食事摂取量が増加するということを示しました。患者さんにとって食事摂取量の増加は健康回復につながります。患者さんの要望に沿ったひとりひとりの朝を創るモーニングケアは、毎朝積み重ねることによって、患者さんの健康回復を促していくのでしょう。

温故知新という孔子の教えにあるように、昔の良き習慣を振り返ることで新たな健康の方略がみつかるかも知れません。皆さんも充実した「朝時間」をお過ごしくださいね。

看護コミュニティ

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