特別養護老人ホーム 幻月苑

2009.09.21
特別養護老人ホーム 幻月苑

著者:阿比 聖介
出版社名:雲母書房
発行年日:2008年07月
価格:\1,890
ISBN:978-4876722518

本書は、実際に老人病院のヘルパーとして働く著者が現場体験から着想を得た10編からなる本格小説です。老人ホームを終の住処とするお年寄りたちの様々な人生を、ショートストーリー仕立てで描いています。

一人ひとりが生きてきた人生というものは、どんなものであっても、何よりも価値があり意味があることなのだ。また、たとえ心身が衰え、死が近くなったとしても、それでもなお、生き切ることによって、"老いという難題"は越えうることになるはずだといいたい気がする。(「あとがき」より)

(目次)
虚構/虹の色/赤い月/淡雪/風の景色/群青/夢月/蟹のかたち/浄域/二人旅

介護の際に問題になる事の多い事例のひとつに、幼児に対するような接し方をするというものがあります。確かに、心身に障害を抱える老人たちは、時として退行化したような言動をする場合があるかもしれませんが、本人だけでなく家族にとっても辛いものです。お年寄りの生き様を知ることは、相対する際に必要な『敬意』を与えてくれるだけでなく、自分たちの人生を見つめ直すきっかけを作るための重要なヒントとなります。

本書の中の一遍『風の景色』。警察官僚と結婚し息子二人が学生運動に身を投じ逮捕された千賀子。夫はやがて急死し、二人の息子のうち長兄は長い刑期もあって、精神を病み、事故か自殺か不明のまま溺死してしまいます。

「わたしは現実を忘れません。現実を忘れることは、その中で生きて苦しんだ人のことを忘れることですから」という言葉は心に深く残りました。年を重ねると過去への執着を軽視されがちですが、自分のそれまでの人生を大事に思うのは当然だと思うのです。

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