10年いろいろ

2010.09.21
10年いろいろ

― 母の病気で、世界、広がった。―
著・イラスト:米窪 麻友子
出版社名:芳林社
発行年日:2008年08月
価格:\840
ISBN:978-4904348017

本書は、重度のくも膜下出血により突然失語症の寝たきりとなった母親との生活の中で、娘が自分の心の変化や気持ちの持ち方を日記風に綴った介護エッセイです。グラフィックデザインの仕事をしている作者が、2005年に小冊子という形で自主制作したのが出版のきっかけでした。介護の技術など難しい内容でなく、家族を介護する人の素直な気持ちが語られています。

作者は当初「辛くてたいへんじゃないと介護じゃない」イメージを持っていました。
母親は入院治療なので家庭での介護をしていません。「自分が今行っているのは一体なんなんだろう?」「介護って何なんだろう...?」と悩んだ時期もあったそうです。
そんな時、介護の会で知り合った方の「病気や障害のある誰かを、少しでも良くなるようにと、寄り添って生きること、それが『介護』なのではないでしょうか?」という言葉に救われたそうです。本書には、介護に不安を持たれている方に、「介護=辛い」ばかりではないはずだから、必要以上に拒絶せず身近にとらえて欲しい、という作者の想いが詰まっています。

ひとつの不幸な出来事がきっかけですが、そこから生まれた家族愛。母を想う娘の気持ちを文章とイラストで丁寧に優しく表現されているだけでなく、読み応えある内容になっています。
家族だからこそ辛い事も多い介護ですが、心の奥にある家族愛を再発見させてくれる一冊です。

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