ユートピア老人病棟

2012.06.21
ユートピア老人病棟

著:江川 晴
出版社名:小学館
発行年日:2009年09月
価格:\580(税込)
ISBN:9784094084276

主人公の湯浅マキは、元眼科医の76歳。7年前に夫を亡くし、今は夫の跡を継いだ息子夫婦と暮らしています。
自分では元気ハツラツとして、老いとは無縁と思って毎日を過ごしていました。ところが、近ごろ急に物忘れをしたり、ちょっと散歩に出かけて帰り道が分からなくなったり、痴呆の症状が現れてきました。

ある日、めずらしく息子夫婦にドライブに誘われてウキウキ出かけてみると、連れて行かれた先はなんと病院。検査を口実に入院までさせられてしまいます。しかもそこは老人病棟。マキは戸惑いながらも、次第にその病棟の人々に興味を抱くようになります。息子が温泉旅館に連れてきてくれていると信じている独身老女、入院中に知り合い結婚をするカップル、介護放棄をする家族や現場での対応をする病院スタッフの家庭事情。さらには医療制度の改正による病院の危機など。

様々な問題が多い老人病棟の出来事が、快活な主人公の目を通してユーモアに包んで描かれています。「誰だって好き好んで年寄りになったわけじゃない」「今のお年寄りの姿は、若い皆さんの将来の姿なんですよ」そんな言葉に、ハッとさせられます。
本書は、2003年に刊行された『痴呆病棟』を改題のうえ、加筆修正されたものです。作者の江川晴さんは1924年生まれの元看護師。第1回読売「女性ヒューマンドキュメンタリー」大賞を受賞した『小児病棟』など、医療小説の第一人者です。現場を知っている作者だからこそ、高齢者介護がこうであって欲しいという願いを込めて綴ったのでしょう。

東京近郊の老人病院・痴呆病棟を舞台に、理想的な医療を目指す院長や看護部長と個性豊な患者たちが繰り広げる物語。老人医療の現状、患者の家族の戸惑いや苦しみなどを理解することもできる一冊です。

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