著者:中村淳彦
発行:東洋経済新報社, 2019年4月
19cm / 350ページ / 定価1,650円(税込)
ISBN:978-4-4922-6113-2
著書の筆者は、風俗史のライターを経験し、風俗嬢と何度も対面している。その中で見つけた、風俗業界の闇、ひいては日本の貧困の現状について実際にインタビューした内容で詳細に述べられている。正直、日本の将来が不安になり絶望にも感じるが、筆者は淡々と述べており、風俗業界に対して否定も肯定もしない。そこが読みやすさでもある。
普段生活する中で、他の家族について詳細に知る機会はほとんどないだろう。インタビューを受けていた人々の生活は、学費を親に払ってもらった人には一生経験することもなければ、想像もできないような話である。これが日本のすべてではないにしても、確実に日本の一部であり、現実であることを思い知らされる。奨学金返済に苦しむ若者は多くいるが、この返済についてどこまで考えることができて18歳の子どもが奨学金を申し込んでいるだろうか。返済義務のない人間はごく一部であり、なかなか給付の奨学金はおりないのが現実である。大学生になりたいというのは、贅沢な思いなのだろうか。大学生になりたいと、だれもが当然のように言える国になってほしいという感情すら芽生える。
日本の子どもたちの貧困は、だれのせいなのか、どうしたらいいのか、親だけではなく環境や制度について考えさせられる。すべてを鵜呑みにすると苦しくなるが、日本について考えるきっかけになる本であると考える。日本の現状について視野を広げるにあたり、このような本を読むこともひとつの手がかりなのではないだろうか。
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