近所のお年寄りから「どこにも行き場所がない」と言われたのがきっかけでした。約25年前にできた新興住宅地は退職後に移り住んできた人も多く、高齢化が進んでいました。家のカーテンはいつも閉められ、互いの名前すら知らない。
当時、地域おこしに取り組んでいたAさんは「何とか状況を変えたい」と考えました。高度経済成長期 を乗り越えて、超高齢社会の到来や相次ぐ大震災の影響、経済の不安、コミュニティの崩壊などの現状を間近にみて、自分にできることは何かと考えました。
「小町ウイング」※1は熊本県植木町判に地域づくりを行う任意団体として2000年3月に設立しました。健康人口を増やすことや地域資源を生かしてコミュニティを再生する"まちづくり" の活動に取り組んできました。
※1 植木町は2010年に熊本市と合併した。
これらの活動を行っている中で感じた地域の ニーズは「健康な高齢者の"居場所"の確保」 でした。
"コミュニティカフェ"を開設するためには 「人・物・お金」が必要です。
「人」・・・「小町ウイング」を運営していた仲間に保健師や看護師がいたためか、ホスピタリティなボランティアを 希望する者が多くいてくれて助かりました。
「物」・・・建物を自宅の庭に増築したことで、開設費用はずいぶん安価になりました。
「お金」・・・改修や備品購入に助成事業を活用した*2。いろいろな助成事業があるので、これから開業される方は検討してみると資金面で助かります。
また、改修の際には事業計画と建 設期間などを検討しておくことが大切です。
*2 熊本県の「地域の縁がわづくり推進事業費補助金」を活用。
"居場所"を開こうとしている方は、地域住民の代表など、どのような人を開所日に招くかを検討し、調整されておくとよいです。
上記のような準備を経て、2007年度に植木町の住宅街にカフェ風の地域の保健室「しらかば」を開設しました。
「しらかば」では介護保険のサービ スは実施していません。
("まちづくり"の経験 から「介護保険外で地域を支える体制をつくることもこれからの時代には必要である」と思ったからです。)
「しらかば」は、退職した看護職の活用で地域を支えるコミュニティの再生に取り組んでいるのが特徴です。新しい地域福祉のあり方にチャレンジしています。
パーソン・センタード・ ケアを大切にして、その人が持っている力を生かせるように働きかけています。
生きがいづくりや、閉じこもり防止のための"居場所"をつくることも行っています。
介護保険事業や収益事業に取り組もうとすると、法人化が必要になります。
「しらかば」の 母体である「小町ウィング」は任意団体として活動していましたが、地域のニーズに応え、さらに運営を広げていくことを考え、2010年9月にNPO法人を取得しました。
地域の"居場所"として、もっと"看護の力" を発揮するために、訪問看護や療養通所介護等の運営を検討しています。