「いのち」を考える

2005.08.01
有森 直子
  • 2005/08
  • 助産師:有森 直子

看護学生のころ医療は、病気や苦しむ方へのケアばかりかと思っていた私にとって、「出産」という「よろこび」の出来事が医療現場であるということは、驚きであり、とても感動しました。しかし、「おめでたい」場であるからこそ、そうではない「死産・流産」の方の体験がいかにつらいものであるのか、子どもを願っても授からない不妊という、病とはまた異なった苦しみ、障害をもったお子さんを育てていくこと・・・。「どうして、このようなことが私におこるのか」と当事者の方が思うように、自分も悩みました。生殖のメカニズムを考えると、自分がうまれてきたということは実はものすごいことであることに気づきます。人間も、自然界の営みの法則にそった存在の一部であり、与えられた「いのち」は唯一無二のものであり、しかし脈々と有機体誕生の時代から引き継がれた歴史を遺伝子にもっている すなわち多くの人の人生を背負っているというとても不思議な存在であることを私たちは知らなければなりません。

昨今のこどもたちの悲しい事件(自殺など)は、誕生の場にいる助産師としてなにかできないかという思いを強くさせました。養護教諭の先生は「自分がこの世の中に生まれてきてよかったのか、親から必要とされているのか自信がもてないという根本的なところがゆらいでいるというとても深刻な事態の状況にある子どもがいる」という言葉もとても、ショックでした。

このような背景もあり、数年前から、助産師が中心となって、小学校に出向き、「いのちの教育」を始めました。私たちのメッセージは、「あなたがいて幸せ、いつもにこにこ大好き」としました。まず、すべての子どもが祝福されて生まれてきたことを伝えたかったからです。「いのち」は、君だけの「いのち」であり、同じ人はいない、でもそのいのちは、お母さんお父さん、おじいちゃん、おばあちゃんから、ずーっと引き継がれてきたたくさんのメッセージをもっている君ひとりだけのものでもない。

小学5年生でも、このようなメッセージの受け止め方は様々でした。「生まれてくることを考えることで、死についても考える機会となった」「お母さんが大変な思いで生んでくれたことがわかった」また、親御さんの反応は「誕生の時を思い出し、そのときは、健康でいてくれたらとそれだけを願っていたのに・・最近の自分のことを反省した」「お産のときのことを家で子どもにかたってあげようと思いました」のような声がきかれました。

  ヒトゲノムの解析という科学技術の進歩が、人間の「いのち」の本質を深く知ることに役立つようにあってほしいと願います。
具体的な内容は、看護ネットをご覧になってください。

●研究ページ
・日本型遺伝看護
・国際看護コラボレーション実践開発

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