こんにちは、私は「看護師」となってから長いのですが、白衣を着なくなってから 10年以上たっています。今の仕事は聖路加看護大学の学長であり、看護管理学の教授でもあります。日本看護協会副会長でもあり、日本看護管理学会理事長もしています。10月27日と28日に開催される第43回 日本病院管理学会 学術総会の会長でもあります。その他、いわゆる「社会活動」としていくつかの委員をひきうけ、看護人員体制の研究もやっています。
私は立原正秋という作家に感化され「秘すれば花なり」をモットーにしている自称、文学少女です。いろんなことをあとまわしにしても、好きな作家の小説をむさぼるように読むクセがあります。 この間、読んだのは村上春樹の『東京奇譚集』です。今、書店に行くと(マイ書店は銀座の教文館ですが)、 平 ( ひら ) 積みになっているのですぐ目に入ります。この本は、著者の身に起ったいくつかの「不思議な出来事」をじかに語ったということですが、一番目の「偶然の旅人」が実に身にしみてよかったです。
主人公は、ピアノ調律師で多摩川の近くに住むゲイです。三歳年下のボーイフレンドがいます。二人は別々に暮らしています。ガールフレンドに「ホモ・セクシャルなんだと思う」と打ち明けたことで、周囲に知れわたり、家族の中でもっとも親しかった、二つ年上の姉と仲違いをしてしっしまったことが「何よりこたえた」のです。彼は火曜日にきまって、あるカフェで数時間読書をするのが日課となっています。いつものように、チャールズ・ディケンズの『荒涼館』を読んでいると、偶然にも、隣のテーブルの女性も同じ本を読んでいて声をかけてきました。この驚くべき偶然から物語は発展し、彼女は乳癌で手術をすることを知ることになるのです。彼女の耳のほくろに姉を想い、久しぶりの再会をした時、姉も乳癌の手術を受けることになったと打ち明けるのです。このことで姉と仲直りができ、彼の人生はひとつ前に進めたのです。
このようなあらすじですが、村上春樹の何ともいえない味わい深い文章にしばし酔いしれてしまいました。私はこうして心の潤いを得て、また日常にもどるのです。
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