見えない対象者への看護

2007.11.20
  • 2007/11
  • 聖路加看護大学
  • 看護師:亀井 智子

私の最近の研究について紹介します。皆様は「テレナーシング」という言葉をご存知でしょうか。「テレ」とは電話や電子メールなどインターネットを含む通信技術を用い、遠くにいる相手とコミュニケーションをとることを指しています。「ナーシング」は看護です。「テレナーシング」とは遠隔看護とも言われ、直接目の前で対面せずに遠くの相手にいつでも、どこにいても行える看護の提供方法のことをいいます。

テレナーシング実践は1980年代後半ころから欧米ではじめられ、妊産婦、地域住民、慢性病をもつ方などに広く普及しています。日本でも2000年に政府がうち出した「e-Japan 戦略」を機に少しずつですが看護のIT化が進んできましたが、それ以前から電話による健康相談などを地域の保健師や助産師、看護師は行っていますので、歴史は長いといえます。

私がテレナーシングの対象としているのは、呼吸器に障害を持ち、家庭で酸素療法を行いながら療養されている方々です。呼吸器に障害をもつと息切れ、咳、痰などの症状を持つことが多くなります。息切れは特に労作をするときに生じますので、外出や家事が困難になることもあります。人ごみに出かけると呼吸器感染を生じることがあり、息切れが増強してしまいます。また、かぜをひくことなどが誘因となって、肺炎を起こすことがあり、これらの状態を呼吸不全の増悪とよんでいます。

適度な運動、栄養バランスのとれた食事、うがい・手洗いの励行、睡眠、適切な薬物使用、在宅酸素療法の継続など増悪を防ぐためには、包括的呼吸リハビリテーションが重要です。それとともに、増悪の早期に適切に対処することがとても大切です。

テレナーシングでは対象者の日々の心身情報を把握して、増悪の兆候はないかモニタリングしています。増悪兆候が把握された場合には、電話やテレビ電話によって対象者の様子を観察します。その日の体調に合わせて先の呼吸リハビリテーションを忘れずに行えるよう、対象者のご家庭に設置した小型端末上に提示しています。 これまでに利用された方からは、「繋がっていて安心」「見守られていて心強い」「日常生活の細かい問題や不安が解決した」というご感想をいただきました。また、ご自身の体についてよく観察できるようになり、血圧や血中酸素飽和度、ピークフローの値をご自身で把握できるようになるなど、自己管理の意識が大きく変化しています。再入院することもなく、療養生活は安定しておられます。

親身になって相談にのる人のことをメンターといいます。メンターとは老賢人メントルに由来する言葉です。テレナーシングではメンタリングが重要です。直接対面しないで行う効果的なテレメンタリングの方法をさらに探求していきたいと思っています。

遠隔医療が広まりつつある今日、テレナーシングを含めた遠隔医療の法整備も待たれるところです。

看護コミュニティ

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