私は、今年聖路加国際病院から聖路加看護大学に出向になりました。がん化学療法認定看護師コースを担当しております。看護師になってからずっとがん看護に携わってきた気がします。看護師ってなんだろう・・・看護ってなんだろう・・・時々考えています。
なぜ看護師になったかというと、まだ高校生だったころ母(今は元気にしておりますが)が癌になりました。当時私たち家族は父の仕事の関係でアメリカに住んでいたのですが、そこで手術をすることになりました。もう20数年前の話です。日本人のお医者様もいたのですが、内科医。紹介していただいた婦人科の医師はもちろんアメリカ人。言葉、まして医療用語なんてわかるわけもありません。手術の説明は丁寧にしてくださったと思います。手術前に手術着をきてお医者様がマスクをとって「僕が手術をするからね。」といってくださってとても安心したのよと母は常々いっておりました。手術も無事終わり、何日かたってお見舞いに行くと、ちょうどお食事の時間でした。「日本人だからお魚がいいかしら、お醤油もいるわよね。」とアメリカ人の看護師さんが笑顔で言いました。母は言葉が全くわからないのですが看護師さんたちはいつも笑顔でいろんなことを手伝ってくれました。「おなかの管を抜いたあと、シャワーを浴びていいよって言われたけど、不安だった・・・でも、看護師さんがそばについていてくれたからシャワーを浴びたわ。」そんなことも言っていました。母はきっと不安そうな顔をしていたのでしょう。それをみた看護師さんはきっとそばにいてくれたんだなぁとその話を聞いて思いました。私もそんな看護師になりたいと思ったわけです。
最近、アメリカの病院を訪問する機会がありました。看護師も「スペシャリスト」になると医者との区別が付かないほどいろいろなことができるのです。できないのは手術と治療の決定くらいでしょうか。でも、そういう「スペシャリスト」の方々も技術の面では医師に近いですが、お話をしてみるとみんな立派な看護師なのです。学校で習った「看護」そのものがそこにあるのです。そして私はいつも考えてしまうのです。彼らの内面からでている「看護」ってなんだろう。
患者さんにとって看護師ってなんだろう。患者さんのそばにいつもいる私たちはなにか力になれているのだろうか。そんな思いがいつも頭の中にあります。患者さんの気持ちが少しでもわかるように、どうしたら普通と変わらない生活を送ることができるようになるだろうか、いろいろなことを考え、工夫しながら努力しています。皆さん、病院に診察に来て困ったときはどうしていますか?ぜひ、看護師に声を掛けてください。きっとなにかお手伝いできると思います。