看護師長の仕事の魅力

2010.12.20
野田 有美子
  • 2010/12
  • 看護師:野田 有美子

みなさんは、病棟の看護師長がどんな仕事をしているかご存知でしょうか?私は、2008年4月から2010年の3月までの2年間、公立病院の病棟の看護師長をしていました。

入院中の患者さんやご家族からは、看護師長は、入院した時に挨拶に来て、医師からの説明の場に同席していて、日々、患者の様子を見に来る人、相談にのってくれる人というように見えるかもしれません。
看護師長は、ひとつの部署を管理する立場にあり、その部署で提供される看護サービスに対して責任と権限を持つ者です。
私自身は師長として、自分が管理する病棟に入院される全ての患者さんの生命と生活、看護師が提供する看護に対して責任を負っていると覚悟をして仕事をしていました。強い緊張を感じる場面も多々ありましたが、とてもやりがいのある仕事でした。ここで、あるエピソードを紹介したいと思います。

私が師長として勤務していた病棟は、内科病棟で、高齢の患者さんが多く入院されていました。
高齢であるため、残念ながら入院中に亡くなってしまわれる患者さんもいらっしゃいました。病棟の看護師たちは、患者さんが元気で退院されていく姿を見たいのに、亡くなった後のお体をきれいに整えて見送る日々が続くと、看護師としてのやりがいを感じることが難しくなります。超高齢社会であるわが国において、今後はもっともっと多くの方が亡くなっていくことが予想されます。
私は、そこで、患者さんの看取りに力を入れた看護を提供しようと考えました。
看取りというと、これまでは、がん患者さんの看取りのケアが注目されてきました。
しかし、高齢の患者さんは、がんだけでなく肺炎や心不全で亡くなることも多いです。
がんに限らず、死を前にした患者さんに対して苦痛などのつらい症状を緩和すること、尊厳を保つこと、大事な家族の命を見守る患者さんのご家族に寄り添うこと、このような看護をもっと提供したいと考えました。
そこで、私の考えをスタッフ全員に伝えて、「『看取りケア充実化プロジェクトチーム』を作るから、仲間に入らないか?」と呼びかけました。数人のスタッフが名乗りを挙げ、副師長をリーダーとしてチームができました。
チームはまず、看取りのケアに関する本を1冊テキストにして、月1回の勉強会を始めました。
さらに、勉強会で得た知識を用いて、終末期の患者さんに対する看護計画を立案しました。
日々のカンファレンスでは、チームに入っている看護師が、終末期の患者さんを受け持っている後輩看護師に看取りのケアのアドバイスをするようになりました。このように、スタッフたちが看取りのケアの力をつけて、病棟全体で積極的に取り組むようになったことは、師長としてとても嬉しく、私は看護師たちを誇らしく思いました。
看護師が、一生懸命に看取りのケアをし、お見送りをした患者さんのご家族から、感謝の言葉やお手紙をいただいたことは、印象深く私の心に残っています。 看護師長は、第一線の看護師のように、直接、患者さんの看護をすることはほとんどありません。
そのため「やりがいを感じることができないのではないか?」という看護師もいます。
私自身は、師長として、病棟で目指すべき看護を定め、看護師たちと力を合わせながら、それを実現していく過程がとても楽しく、師長ならではのやりがいを感じることができました。患者さんとご家族の満足、看護師たちが生き生きと働く姿が、看護師長としての私を支えてくれたと思います。

現在、私は看護大学の教員として看護管理学を担当しています。私が感じた看護管理の魅力を学生たちにしっかりと伝えていきたいと思っています。

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