看護場面でのひとこと

2012.01.20
櫻井 文乃
  • 2012/01
  • 看護師:櫻井 文乃

「なんて答えたらいいのか困ってしまった」
実習上で担当する学生の質問で、私は看護師として働いた12年間に、患者さんや先輩や同僚に教わったいろいろな「ひとこと」を思い出しました。私が勤務していたのは、脳神経内科、脳神経外科、CCUでした。

夜勤デビューをして間もないころ、脳外科手術後の男性Aさんのベッドで、小さな光がちかちか光るのに気がつきました。そっと近づくと、Aさんが「SOS」と呟きながら、小さなライトを点滅させていることに気がつきました。何が起こっているのかわからないまま、Aさんに「どうしました?」と尋ねると、Aさんの答えは「赤紙が来た」でした。言葉に詰まっていると、すぐ近くにいた先輩看護師が代わりに答えてくれました。「Aさんは、今はまだ調子が悪いから、赤紙は断っておきますね」。それを聞いた患者さんはモールス信号を中止し、薬剤の力を借りずに就寝されました。

Bさんは49歳の男性で、急性心筋梗塞を発症し、緊急処置を受けた後の不整脈によって再度状態が悪化しました。翌朝、状態が落ち着いたBさんは「みんなが大勢集まってきたときは、もうだめなのかなって思った。そうしたら看護師さんが、心配しなくて大丈夫ですよって、いってくれて、それでやっと自分は助かるって思えたよ」とお話して下さいました。緊急時に対応し、患者さんを安心に導いた看護師さんは、「患者さんが心配そうだったから」と話していました。

看護の場面での「ひとこと」には、時に大きな力がありました。落ち着いた心で迅速に状況判断する能力と相手を思いやる気持ちによって生まれた「ひとこと」は、患者さんを癒したり、回復に向かう気持ちを支えたりすることができるのだと思います。私も、なんて答えたら良いか迷います。これからも実習担当する学生と共に、感性を磨いていきたいと思います。

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