今年から聖路加看護大学の教員になりました。私もこの大学の卒業生なのですが、この記事を書くにあたって学生・臨床時代を思い返している内に、卒業アルバムに「10年後の自分へのメッセージ」というコーナーがあったことを思い出しました。今年が卒業して、つまり助産師になってちょうど10年目にあたります。私は確か、「10年後の私へ、今はやりたいことができていますか?」と書いた気がします。その頃は、今は大学院化された助産課程も学部の選択授業で、4年生で助産課程を選択すると、保健師、助産師、看護師3つ分の授業と実習、就職試験に加え、3つの資格の国家試験対策を同時並行する形でした。自らの希望で選択したにも関わらず、「やらなければならないこと」に追われていた私は、きっと「10年もしたら、臨床経験もだいぶ積んで、のんびりマイペースにできているのかなぁ」と思って、漠然と質問を書いたと思います(よく考えれば助産の選択を取ることができ、当時もやりたい勉強ができていたはずなのですが)。
当時の私は、10年後に自分が看護教員になっているとは思いもしませんでした。助産師として臨床で働くことに憧れていた私は、それ以外の道に行くことをその時点では全く考えていなかったからです。この10年の間に病院でも助産院でも働くことができ、私にとってとても大切な、自分の根幹となる経験をさせていただきました。お産を取らせていただいたり、安静入院で長期に関わった妊産婦さんたちのことを、今でも昨日のように思い出します。
しかし、色々な人との出会いと助けから、私の思い描いていた以上に私の助産師人生は広がっていきました。最初に働いた病院に外国人の患者さんも多かったことから英会話に没頭し、その流れでアメリカに大学院留学することを思い立ち、快く助けてくださる方々のおかげで、ポンポンと大学院への扉が開きました。そこからアフリカの母子保健研究に出会い、気づいたらタンザニアという国と解くことのできないきずなを深め、毎年何かしらの用事でアフリカに行くようになりました。フィールドワークや研修、学会でその他の国にも行くチャンスもいただき、看護・助産の世界の外にも目を向けるようになり、多くの出会いを通じて、今年の3月まではインドで世界保健機関のインターンをする機会にも恵まれました。そして看護教員になったことで、研究をしながら、教育をする経験も積ませていただいています。日々教育をする中で、自分が逆に教えられることが多く、他の先生方のチームワークに学んでいます。今の私には、やりたいことが本当にたくさんあります。もちろん、それに付随して、やらなければならないこともたくさんあります。