よくある質問と回答

2013.02.20
加藤木 真史
  • 2013/02
  • 看護師:加藤木 真史

今までの人生の中で、最もよくされた質問は「珍しい苗字だけど出身はどこ?」というものだと思います。これには決まって「茨城県の上のほうです」と答えていますが、高校時代、看護学部の受験を決めたときから今まで看護に携わるなかで、よくされる質問が2つあります。

一つ目は、「なぜ看護師になろうと思ったの?」という質問です。家族のなかに医療関係者はなく、入院経験もない私にとって「看護師」という職業は決して身近なものではありませんでした。しかし、進路関係の本を読むなかで「看護師」「看護学」という言葉がなぜか目にとまり、看護師?看護師の学問?と興味を持っていったのです。そのことを知った友人のお父さん(医師)が、勤務先の病院の男性看護師を紹介すると言って、食事に連れて行ってくれました。失礼な話、楽しく焼き肉を食べたことは覚えているのですが、ここで何を話したのかはあまり覚えていません。ただ、その方がとても穏やかで終始笑顔だったことは覚えていますし、当時の私が何かを確信したのは事実でしょう。今も看護に携わる人生を歩んでいることを考えると、あの頃の自分はなかなか冴えていたな、と思ったりします。という訳で、この質問には「直感で」「興味を持ったから」と漠然とした回答を伝えますが、大体は「?」という表情をされてしまいます。

病院に就職すると今度は「看護師さんはどんな仕事をしているの?」という質問をよくされるようになりました。「注射とかするの?」というピンポイントな質問もあります。この質問の背景には、看護師の仕事の見えにくさがあるのだと思います。当時、外科病棟に勤務していた私は、手術を受けた患者さんが手術翌日からベッドを離れて歩行するためのお手伝いするのが好きでした。術後すぐに体を動かすことは合併症を予防するうえで重要ですが、歩行できた患者さんは大きな手術を乗り越えたということを実感し、安堵の表情を浮かべ、回復へ向けた前向きな気持ちを見せてくださいます。ですから、手術の傷があっても、点滴や排尿のチューブが挿入されていたとしても、「痛みがなく簡単に歩けた」と患者さんに感じてもらうことが回復のために重要であり、そこに看護師の腕が試されると思うのです。

ただ、残念なことに、私はこの「看護師さんはどんな仕事をしているの?」という質問に上手く答えられた記憶がありません。仕事内容の一つひとつを説明することを相手は求めていないでしょうし、だからと言って、一言で看護の仕事を説明することも難しい。看護の現象を捉えきれていない自分がいたのだと思います。同僚の看護師にこの話をすると、「患者さんと自分だけわかっていればいい」と言う者もいました。確かに、そういう考え方もありますが、私はそれだけではいけないと思っていました。尊敬する先輩や看護師の仲間、多くの患者さんに支えられ、看護師の仕事に面白さを感じていくほど、この素晴らしい職業のことをもっと多くの人に理解してもらいたいと思うようになったのです。

病院を退職した私は、大学院に進学することにしました。看護師なのに看護を説明できない自分、また看護の役割を多くの人に知ってもらいたいという気持ちが、私の背中を押しました。自分が実践していた看護がなんだったのか、それを言葉で説明する方法の一つとして研究があるのだと考え、現在は博士後期課程に在籍し研究活動にチャレンジしています。立ちはだかる大きな壁を目の前にくじけそうになりながらも、私の中にある「看護を自分の言葉で説明したい」という思いがいつも支えになっています。

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