2011年3月11日に東日本を襲った未曾有の大震災から2年が経ちました。聖路加看護大学がNPO法人日本臨床研究支援ユニットと恊働し、震災直後から現在まで継続して活動している福島復興支援プロジェクト"きぼうときずな"も、今年の4月で3年目を迎えようとしています。
被災3県と言われた、宮城県、岩手県、福島県の中でも、原発事故の影響を強く受けた福島県は、復興に向けて複雑、かつ前例のない問題を抱えており、復興に関わる全ての人々が暗中模索の中、様々な課題に向き合っています。
きぼうときずなプロジェクトでは、福島県または市町村の行政から委託を受ける形でいわき市、富岡町の保健所に保健師・看護師を派遣しており、地域の行政保健師の方々をサポートさせていただいています。その活動目標は①行政と連携し、主に避難住民の訪問活動を通して住民の心身の健康を取り戻す支援を行う、②被災地の医療ニーズを正確に把握し、地元の行政にそれを反映することによって、新たな地域医療の構築に貢献することです。
私自身、2012年の4月からきぼうときずなのコーディネーターを担当していますが、時間の経過とともに、避難住民の抱える健康問題も変化しており、避難生活が長期に及ぶなか、肥満や活動制の低下、ストレスからくる糖尿病やメンタルヘルス関連の疾患が重要な健康問題となっています。また大きな環境の変化が、育児や子供の成長発達に及ぼす影響も次第に顕在化した問題となってきています。
地域の行政保健師の方々のサポートをしていて、私自身が強く感じたのは、"保健師"という役割の基本がいかに大切かということでした。保健師は、対象を個でみることと集団で見ることの両方が求められます。住民一人一人が避難生活して行く中で直面する個別の問題に耳を傾け対応することと、広い視点で問題を捉え集団に包括的なアプローチをすることを、常に同時に進めていかなくてはなりません。前例のない状況のなか、日々試行錯誤しながら住民の健康課題に取り組んでいる行政保健師の方々のサポートをさせて頂くなかで、私自身も非常に貴重な勉強をさせて頂いています。
また、活動に関わるきぼうときずなのスタッフ及びボランティアメンバーからも被災地での活動から多くのことを感じ、気づきや学びを得た、というフィードバックをもらっています。皆、それぞれが、故郷を追われるということ、健康でいるということ、人と繋がるということ、地域と繋がるということ...等を、活動を通して深く考え、看護職としての成長の機会としてくれていることは、コーディネーターとして嬉しく思います。
2013年度もきぼうときずなプロジェクトは福島の復興支援活動を継続していきます。美しい福島の復興を信じ、変化する状況に柔軟に対応をすることを心がけ、福島の住民の皆様にとって更なる支援となるプロジェクトにしていきたいと思っています。
きぼうときずなプロジェクト
http://kiboutokizuna.jp
ボランティア情報
http://www.slcn.ac.jp/research/fukushima/index.html#pagetitle