4月から、3年ぶりに聖路加国際病院に勤務することになりました。今年は桜の開花が例年より早く、3月に見ごろを迎えました。桜といえば、お花見です。桜は見ごろの期間が短いので、家族や友人で時間を合わせて「お花見」にいくことがままなりません。今年も、咲いている桜の木を見かけるだけになりました。(残念です。)
隅田川沿いにある現在の聖路加ガーデンというタワーがある場所に、以前は「ガーデン」と呼ばれる庭があり、桜の木がたくさんありました。学生のときは、クラスメイト達とお昼にお弁当をもって、「ガーデン」でかけたものです。
看護師として勤務するようになって、桜は別の趣をもつことになりました。ガーデンの桜が咲いたと聞くと、落ち着いている日曜日を選んで、入院している患者さん数人とともに「ガーデン」にお花見に行くのです。その日の日勤者をやりくりして、お花見隊を結成するのは大変でしたが、なにより戻ってきた時の患者さんの明るい笑顔が楽しみでした。
私が3月まで勤務していた杉並区の病院でも、桜が咲くと病院の側にある神社の桜を見に、患者さんとお散歩にいくということをしています。ここでは、リハビリテーション科の理学療法士の皆さんも参加しています。
桜の時期に限らず、入院中の患者さんを「散歩」に誘うということがよくあります。
多くの場合、患者さんの状態を良い方向に向けたいという考えから、「誘う」タイミングを経験的に察知して行われるようです。困難な治療が続き精神的なケアが必要な場合や、せん妄の状態にある患者さんには、ある種の確実な効果があるように思います。私の父が心臓病で入院している時に、せん妄のひどい父を病棟師長のAさんが散歩に連れて行ってくださったということがありました。思うように帰省できない同業の私の気持ちを汲み取ってのことと感謝しました。そして、その時期から父のせん妄はよくなっていったのです。
このような経験に基づく看護ケアは、長く私たちに受け継がれています。地域や場所を問わず、人間同士の基本的なつながりのなかにあるものです。時にはボランティアの方々にひと役かってもらうこともあり、また医師や他の職種も巻き込んでおこなうことも多くあります。そのなかで、理論的基盤を確立することや科学的な根拠を追及することを考えていくこともあります。
今年も新入職員のみなさんを迎える季節になりました。新たな組織でスタートする皆さんの前途を祝福するとともに、看護管理者として、先人の積み重ねたことを伝えていけるようにしていきたいと思います。