思い起こせば15年前。普段生活する場で看護の仕事がしたい、多くの人が健康になれるような仕事がしたいと卒業と同時に某企業に入社。産業看護職として実践一筋。少しでも社員が元気に働き、活気ある職場になるためのお手伝いをしてきました。今回、看護ネットに産業看護職の投稿が今までなかったので是非とお声掛けをいただきました。
産業看護職という言葉を初めてお聞きになった方、言葉は聞いたことがあるけれどどんな仕事をしているのかよく分らないという方も多くいらっしゃると思います。今回は、日頃仕事をする中で関わってよかったなと感じるエピソードをご紹介し、産業看護の仕事がどんなものなのかお伝えできればと思います。
心の病で仕事を休業する人が増えているという事はマスコミで耳にしている方も多いと思います。私が所属する企業も同様で、精神疾患で一定期間休業した後、仕事に復帰する社員さんをサポートする機会が多くあります。ある20代の方は、真面目に治療に取り組むものの回復せず休業が長引き、休業できる期限ギリギリで復職できることになりました。本人は復帰したい気持ちが強い一方、本当に復帰できるのか不安な気持ちで一杯でした。職場の上司を始め周囲の関係者も、どうやって受け入れればよいの?随分長く休んでいるからまた具合が悪くなってしまうかも。と戸惑いと諦めムードの中復帰の準備を始めたのでした。正直、様々な社員さんを看てきた経験上私自身も、本当にうまく行くのだろうか?と思いつつのサポートでした。
私達産業看護職は、本人と職場両方が職場復帰に向けた準備や仕事の継続ができるように関わります。本人の体調や治療の確認、日頃の過ごし方のアドバイス、復帰や仕事をする上で不安な点やできている事の確認。職場上司の復帰の受け入れ状態を確認し、準備や関わりに際して不安な点に対してアドバイスをします。精神疾患の場合、回復が数値で測れない分、本人も職場の上司や同僚も働き方や接し方に戸惑う事が多くあります。モヤモヤとした状況を交通整理し、問題解決に必要な人を登場させたり、相談を勧めたり、助言をしたり。今の状況が良い方向に行くために人や物をコーディネートしていきます。
この20代の方は復帰後も一部の症状が残り、不安に感じる事もありましたが、ご本人と職場の努力と調整がうまく行き、元気に働き続けています。時々顔を合わせると「体調いいですよ。自分でできる仕事が増えてきて嬉しいです。」と明るく語ってくれます。また、上司の方からも「元気に頑張っていますよ。真面目に仕事をしてくれて、成長しながら十分力になってくれています。」との声をお聞きします。
そんな彼らをみて、「元気に働いてくれているな、職場も助かっているな。」と嬉しくなるのです。彼らへの関わりを通じ、本人や職場の持っている力を信頼し、諦めずに関わることの大切さを学ばせて頂きました。産業看護職の仕事は、本人や職場がよりよい健康に向けて階段を少しずつ登れるよう、時には背中を押したり、一緒に立ち止まったりしながら支援していく。私自身はそんな仕事だと考えています。
日々の関わりから、私自身が産業看護職としてのやる気、達成感をもらい元気に働く事ができているのだなと改めて思います。様々な方との出会いを大切に、これからも多くの人が元気に働くための看護をして行きたいと思っています。