地域や患者さんに育てられた私
2015.01.05
「なんで、こんなに病気の人が多いのだろう???」
ひとり患者さんが退院すると、またすぐに入院される患者さんがおられ、看護師になり内科の混合病棟に配属され、日々の業務に追われながらもいつも感じていたことでした。病棟では、たくさんの患者さんや家族と出会い、私の看護師としての基礎となる多くのことを教えられ学ぶことになりました。
病棟では、私が地域での看護活動をしたいと考えるようになった患者・家族との出会いがありました。そのひとりが、糖尿病で入院されていた30代後半の3人のお子さんを持つAさんです。Aさんとは、数年の付き合いとなり、経口薬からインスリン注射へ、入院のたびに病状がすすみ合併症もひどくなり、入院して治療し、病状が安定し退院されてはいきますが、自宅に帰ると糖尿病のコントロールができなくなるという繰り返しでした。糖尿病性網膜症も進行し視力も失い、インスリン自己注射もできなくなり、とうとう中学生のお子さんにインスリン注射をしてもらうことになりました。その後は、右足の傷が化膿し壊疽で切断しなくてはならなくなりました。退院のたびに、地域への継続看護依頼を出していましたが、状況は悪化していったのです。
いろいろな生活背景や家族背景がありますが、病院という限られた生活だけではなく、その人たちが住む地域で、病気があってもそれをうまくコントロールできるように、また病気になる前に予防にかかわる仕事がしたいと思い、私は保健師になりました。病院の中の生活の一部分だけではなく、患者さんがその人らしく生活する地域での生活をサポートしたいと思ったからです。
地域での保健師の仕事を通しても、出会った地域の方々から多くのことを教えてもらいました。赤ちゃんから高齢者までを対象にさまざまな予防活動を通して、人が生活するということや生きるということの大変さや意味あいが、自分も年齢を重ねて生活体験が増え、理解できるようになってきました。病気や障害があっても地域という生活の場でその人らしく家族とともに、より良く生きるためには、簡単ではありませんが、地域の環境を整えたり、人とのつながりを大事にしていくことが必要です。
今は、訪問看護ステーションでの医療ケアの必要な障害のある子どもの日中一時預かりや、コミュニティスクールでの活動、地域のサークルでは、映画の自主上映会の活動を地域の方と実践しています。このような地域の活動を通して、WHOが言うように、医療や保健だけではなく、教育や文化、運輸、労働、住居、工業、都市開発、農業といった他分野との協働の必要性を実感しています。また、これらの活動を通して、保健師としても、いち人間としても育てられ成長していることを実感しています。これからもコツコツと地域での活動を続けて、自分もまわりも成長していけるようになりたいと思っています。