子どもと家族の生活を支える看護を考える

2015.02.02
小林京子
  • 2015/02
  • 看護師:小林京子

私は2001年に看護師になりました。それから今まで小児の看護に関わってきました。看護師なる前は会社勤めをしていたのですが、家族の療養を通じて看護への思いを持つようになりました。

会社勤めを始めて2年目の頃,姉がかわいい女の子を出産しました。私は完全に親バカならぬ叔母バカになりました。私の指をぎゅっと握ってくれたり、寝返り、お座りと、成長をみてさらに叔母バカぶりを高めていました。ある日、どうも不機嫌な様子の日があり、次の日には入院となって、その後6ヶ月間の入院生活。ずっと病気を抱えていくこと、それまでのような発達を遂げることが難しいことを理解しました。さらに、同時期に母が乳がんと診断されて手術と抗がん剤治療を受けることになり、私たち家族の生活は療養一色になりました。様々な生活の調整が必要になる中で、何をどうやってきたのか分からないような3年間が過ぎ、段々と、そしてはっきりと病気を持つということは体の問題だけではないと感じるようになりました。それまで、のんびりとした人生を送っていた私には、自分が生きることや生活することに対して感じていたことはまるで真実ではないかのように思えてきました。そして、病気を抱えながら人生を送るとしても、その人と、その人の大切な人の病気そのもの以外の大変さをできる限りなくすこと、その人その人の生活を支えることを手伝う仕事がしたいと考えるようになり、看護の道を目指すことを決めました。

聖路加を卒業し、聖路加国際病院の小児病棟に就職しました。大学でも病院でも、素晴らしい先生方や仲間に出会い、ひとりひとりの患者さんと家族をトータルに支えていくトータルケアといった、その人その人の生活を支える看護についてさらに深く考える機会をいただきました。また、何よりも出会ってきた子どもたちと家族たちが、時に楽しい場面で、時に真剣に向かい合う張り詰めた場面で、様々に語りかけてくれたことから、看護師の私は教えられ、そして病気を持ちながら生活する人の家族の1人としては密やかに思いの共有と慰めをいただきました。そのような、心からの感謝と尊敬を抱いてきた子どもたちと家族たちとの出会う臨床を経て、大学院に進んだ私のテーマは小児がんの子どもと家族のQOL(Quality of Life:生活の質)です。QOLという概念を具体的な項目にして、子どもや家族の状態を評価する指標をつくり、医療と看護ケアに役立てていくことを目指しました。

QOLは不思議な指標です。子どもや家族自身の認識に立脚しながらも、その人が生活する社会から期待も反映するところがあります。そのため、とても現実的な生活の有り様を知ることができると考えます。

昨年、私はアメリカのフィラデルフィアに留学していました。アメリカでもQOLの根底にあるもの一緒でした。しかし、QOL向上するための対処方法は少し日本とは違うと感じました。例えば、小児がんから経験する不安、心配、希望などは、わが国と同じですが、アメリカでは子どもにも告知し、長期的に生じる身体的な問題なども伝えられ、伝えることで子ども自らの対処を促進するという考え方でした。そのような対処方法は、時に驚きを感じさせるものでもありましたが、診療の場に参加させてもらいながら、大事なことは子ども・家族と医療者が一緒に取り組むゴールを共有することではないかと考えました。現在、長期にわたる高いQOLを実現する看護ケアとして、子どもや家族とゴールを共有し、子どもと家族がそれぞれに合った形で、できるかぎりの自立を促進するケアを提供したいと考えています。また、国や文化によって、具体的な方法は異なることがあるのは当然です。今後、日本らしい方法をみんなで考えて、子どもと家族の高いQOLの実現に貢献できる看護に携わっていきたいと思います。

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