私は「特定行為に係る看護師の研修制度(当時は特定看護師と呼ばれていました)」の養成課程を修了し、在宅医療の現場で特定行為を行う看護師としてチーム医療の推進に取り組んでいました。この「特定行為に係る看護師の研修制度」は、2010年3月の厚生労働省「チーム医療の推進に関する検討会」での特定看護師の創設の提言を受けスタートしたもので、5年ほど経ちようやく形になる段階に来ています。「看護師の特定行為の実施は医師不足の解消につながるか?」という点に注目されることも多かったですが、原則的にはチーム医療の推進を目的として検討が進められてきた制度です。
チーム医療という言葉は、医療関係者はもちろん、それ以外の方でも耳にしたことがあるのくらい有名になった言葉かと思います。チーム医療の中で看護は、患者さんの見守り、早期発見、早期対応、他職種への情報伝達など、患者さんを含めた医療チームを「つなぐ」役割が求められることが多いかと思います。
一方で高齢者の在宅医療の現場でよく実感することですが、各職種がそれぞれ独立して多様な役割を果たせることで、チームが機能することが多くあります。看護師としても「つなぐ」以外にも判断し説明する役割が期待されます。特定行為の実施を通して、判断し迅速に対応ができるようになったこと、説明できる範囲が広がったことは、患者さんの要望に沿うことにつながったのではないかと思います。また役割が広がることは結果的に「つなぐ」ことの効率を高めることになり、チーム医療の促進に有効であったと感じています。
あくまでも監督する医師との信頼関係が必須であることは大前提ですが、在宅医療におけるチーム医療の推進のために各職種の役割拡大は有効なのではないでしょうか。また他職種から信頼を得られるように、臨床推論や医療面接技術などの検査・診断・治療に直接関わる医療の実践力を、卒前・卒後教育を通して養っていくことが必要であると感じています。