大学卒業後の5年間、私はダウン症候群の療育指導のクリニックで勤務していました。赤ちゃんから大人まで多様な年代の方が来院し、相談内容は「発達」「心」「勉強」「人間関係」など多岐にわたりましたが、唯一の共通点は皆「ダウン症候群」を有しているということでした。
そのクリニックの唯一の同僚かつ後輩は18歳の女性Aさんでした。彼女は幼い頃からクリニックに定期的に来院していた方で、養護学校高等部卒業後にクリニックに就職しました。彼女は時々、心に秘めたる様々な質問を私に投げかけてきました。
「ダウン症ってなぁに?」
「ダウン症は体質っていうけど、体質ってなぁに?」
私の行動に対して何かを示唆するように・・・。
現在、私は「遺伝カウンセリング」という場を通じて、出生前検査を検討している女性やカップルに対してダウン症候群に関する話をすることがあります。ダウン症候群について話をしているとき、私はクリニックで出会った人々やその家族の姿、彼女の質問を思い出すことがあります。ダウン症候群の方たちやご家族の姿を正しく伝えているのだろうか、胸に手を当てながら考えることがあります。
遺伝医療への関心が急速に高まる中、「生活の中の遺伝医療は何か」を自問自答する日々ですが、彼女に「青木さん、全然違うよ!」と笑われることだけは避けたいものです。