過ぎ越し方を振り返る

2016.02.01
朝川 久美子
  • 2016/02
  • 看護師:朝川 久美子

今年、看護の仕事に就いてから30年となった。あっという間でもあったが、いろいろなことがあったとも言える。就職して10年目の頃は、あと何十年も仕事を続けていくということが、信じられない思いがした。何人かの先輩に、長く仕事を続ける秘訣を聞いたものだった。しかし、先輩方の答えは、「あっという間」「秘訣なんてない」というものだった。その当時は、それがとても不思議に思えたものだった。今になって、先輩方の言葉を実感している。

就職した時に配属されたのは、内科病棟で、CCUが隣にあった。小さな規模のCCUだったため、緊急時などには、内科病棟から手伝いに入ることも多かった。就職して1年目の時は、寮で生活していた。仕事が終わると、同期のスタッフの部屋に集まって、一日に起きた出来事を皆で話し、情報を共有すると共に、ストレスの発散もしていた。
ある日、同期のスタッフが、緊急コールに遭遇した時の話をした。緊急コールが鳴った時、丁度、CCUとステーションの間に立っていた彼女は、駆け付けるスタッフに囲まれる位置に居た。その時、彼女が感じたのは、「現場に駆け付けるスタッフが嬉々として見え、それが恐ろしく感じた」というものだった。医療職として、早く一人前になりたいと思っていた私にとって、その言葉は思いがけないもので、衝撃的だった。そして、その感覚を忘れてはいけないと感じた。その時にかけつけたスタッフは、各自の仕事を全うするために集まったのであって、決して他意はなかったと思う。その時のスタッフも、患者さんやご家族のことを思っていたと思う。ただ、同期のスタッフが感じたことも事実なのだと思った。看護師として、活躍する場がそこにある、という医療職としての思いがあり、同時に生命の危機に瀕している患者と家族の思いが一方にある。専門職としての経験を積んだ現在、思考回路は、自動的に専門職のものとして働いていると感じる。出来れば、医療職としての視点と、一般の市民としての視点を両方持ち続けたいと思う。それは、意識的にしなければ、持つことは難しいと思う。そして、その感覚を忘れないよう、心がけている。

その後、様々な部署で、いろいろなことを体験した。患者さんからも、先輩からも後輩からも、看護職以外の方からも、多くのことを学んだ。中でも、患者さんの付き添いをして、自分が勤めている病院を、患者さんの視点から見たことは、貴重な体験だった。
現在は、市民の方を対象とした健康情報に関わる部署で、主に健康相談をしている。看護という仕事は、経験した全てのことを活かしていける、素晴らしい仕事であると思う。プライベートでも、仕事の上でも、経験した全てを活かしていくことができる。市民の方々の相談を受けながら、これまで経験した、様々な場面で体験したことを振り返りながら、(市民の感覚を教わりながら)対応している。

看護コミュニティ

ページ評価アンケート

今後の記事投稿・更新の参考にさせていただきたいので、ぜひこの記事へのあなたの評価を投票してください。クリックするだけで投票できます。

Q.この記事や情報は役にたちましたか?

Q.具体的に役立った点や役に立たなかった点についてご記入ください。

例:○○の意味がわからなかった、リンクが切れていた、○○について知りたかったなど※記入していただいた内容に対してこちらから返信はしておりません

最大250文字