卒論を書く看護学生に伝えたいこと~卒後2年目の看護師の経験をもとに~

2016.12.01
松井 晴菜
  • 2016/12
  • 看護師:松井 晴菜

私は2年前まで大学生だった。今は病院で病棟看護師として働いているが、たまに母校の図書館に調べ物をしに来ることがある。12月は学生がパソコンの前を占領し、卒業論文に追われる時期だ。もし、2年前の自分と同じ状況にいる学生に一言声をかけてあげられるとしたら、私は「最後まで諦めずに自分のテーマとじっくり向き合って」と伝えたい。なぜなら、社会人になって働きだすと自分の興味あるテーマについてじっくりと考える時間を取るのが難しいからだ。

私の卒論のテーマは、「看護学研究の成果と実践を発信する方法と意義―ニュースサイトのHuffingtonPostへの投稿とレスポンスから」であった。保健医療社会学(看護情報学)の中山和弘教授から指導を受けた。方法としては、主に基礎看護学の内容の看護研究を市民向けに解説する記事を書き、約1か月間にわたりHuffiintonPostというメディアに投稿しFacebookで拡散し、得られた反応を分析した。HuffingtonPostとは、政治、メディア、ビジネス、エンターテイメント、生活、スタイル、自然環境、世界のニュース、お笑いなど広い分野を扱う、アメリカ発のインターネット新聞 (Wikipedia参照)だ。

なぜこのようなメディアに看護学研究の記事を投稿したかというと、看護から連想される感情的なイメージではなく、科学的根拠がある看護の価値を多くの人に知ってもらい評価してもらいたいと考えたからだ。私の投稿した記事への反応はネガティブなものからポジティブなものまで様々であった。当時そのメディアには16万人の読者がおり、私の記事は、Facebookで3000いいね!以上ついたものもあれば、逆に400いいね!くらいしかつかないものもあった。この結果から得られた反省点を簡潔に言うと、「読者のニーズを把握して、読者にどうなってほしいのか明確にすることが重要だ」ということだった。そしてなにより、発信には大きな責任が伴うことを実感した。

この経験から、私は働き始めてから何かと患者さんのニーズを意識するようになった。今、私が働く病棟は混合病棟であり、様々な疾患の患者さんが入院している。糖尿病、腎臓病、心不全、肺炎、癌・・・軽快退院される人もいれば、急変して亡くなる人もいる。それぞれの病期や状況によって、ニーズも異なる。患者さんのニーズには、看護師だけで対応するのが難しいため、多職種カンファレンスが毎週開かれる。医師、薬剤師、栄養士、リハビリ、地域連携部など、様々な視点からその人の今後の生活や治療について話し合っている。その中で、普段から患者さんをベッドサイドでよく看ている看護師の発言の影響力はとても大きい。時に、全体の方針を左右しうる。例えば、認知機能が低下した糖尿病の患者さんがいたとしよう。その方は、自分で自分のことを管理することができず、周りにサポートしてくれる人もいない。その患者さんは退院後、糖尿病の治療のためのインスリン注射を1日4回自分に打つこともできないし、食事療法や運動療法や内服治療を行うこともできない。この現状を医師に伝えて1週間に1回で済むインスリンに変更したほうがいいのではないかと提案したり、栄養士やリハビリ士に伝えて宅配食やその人のライフスタイルに合わせた運動方法を一緒に考えたり、訪問看護やその他サービスの導入を地域連携部や家族と一緒に考えたりする。このような体験から、医療現場で看護師は、専門的な意見をアピールし患者の生活を守っている、と実際に働いてから身をもって感じている。

今回、ご縁があって看護ネットに私の卒論の内容を一つのコンテンツとして扱ってもらえるという機会を頂いた。看護師の専門性を病院内だけではなく多くの人に知ってもらうために何ができるか、これからも考えていきたいと思う。

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