私は看護師である母を見て育ち、高校生の頃に看護師を目指そうと思いました。私の家は田舎で、祖父、祖母、両親、兄の6人と犬1頭の家族でした。共働きである両親の代わりに何かと面倒を見てくれたのが祖父母でした。赤ん坊のころはゆりかごの代わりが祖父の運転する耕運機の揺れであったり、夜勤で母がいないときにさみしいと祖母の布団に潜り込んで一緒に寝たりしていました。私の住む地域では、昼間は祖父母が世話をする家族が多く、友人の家や公園などどこに行っても高齢者がいる環境でした。このように育った私は、高校生になり進学を考えたときに、看護師になって高齢者の医療や健康に携わりたいと自然と考えるようになっていました。
しかし、大学に入学すると老年看護学はそれほど人気がなく、友人たちは小児看護学、急性期看護学、周産期看護学などに興味がありました。友人には、「なんで高齢者がそんなに好きなの?何が魅力なの?」と聞かれ、「みんなが子供が好きなように、私は高齢者が好きなんだよね」と答えていたのを覚えています。生まれてからずっと、身近に高齢者がいた私にとっては老年看護学領域に進むことはごく自然なことでした。
現在、老年看護学の教員となり学生に教える立場となりました。学生からは高齢者の方と病院以外で接したことがなく、あまり高齢者のイメージが湧かないという意見を聞くこともあります。しかし実習において、学生が様々な健康段階の高齢者の方と接することで、成長していく姿を見ることも多々あります。3週間の実習を終えて個人面談をしている際に、「以前は、あまり高齢者のイメージが湧かなかった。暗いイメージでもあった。実習が始まる前は気持ちがズーンて感じでした。でも実習をして高齢者の方へのイメージが変わり、高齢者と接するのは楽しいのかもしれない、高齢者看護も面白いかもと感じている自分がいます。」といった率直な感想を言ってくれた学生もいます。ある学生は「認知症の方と接するのは初めてでした。様々な症状があることは授業で学びましたが、今回接することで、個性のある認知症なんだなと感じました。」と振り返っていました。疾患のみにとらわれず、ご本人の性格や背景を知ることが大事であり、その方のケアにつながると学んでいることが分かる振り返りをしてくれる学生もいます。
私には、私を老年看護学へ導いてくれた祖父母や家族、恩師がいます。そして、自分が老年看護学を学生とともに考える立場となった今、学生を導くというよりも、学生の伴走者として、老年看護学を、高齢者の生活を、共に考える日々を送りながら、高齢者の幸せを願いケアに携わる仲間を少しでも増やせるといいなと、日々、思っています。