一緒に作り上げるケアの空間

2020.05.01
竹森志穂
  • 2020/05
  • 看護師:竹森志穂

私は、都内の病院で3年間働いた後、少し自由な時間を過ごしてから、訪問看護ステーションで働き始めました。病院では循環器疾患をもつ入院中の大人に関わることが多かったのですが、訪問看護を始めて、あかちゃんからお年寄りまで様々な年齢の、そして様々な病気や障がいをもって生活している方々と出会いました。

訪問看護は、自宅などで暮らしている方のお宅に伺い、その家庭の習慣やペースに合わせて看護をします。看護師はケアを提供する一方で、相手から教えられたり気遣ってもらったりすることもあります。訪問看護を利用している人々は、その空間や生活を一緒に作り上げるパートナーだと感じた出来事が何度もありました。その中のひとつの場面をご紹介します。

私が、訪問看護をしていた80歳代の女性のサチさん(仮名)は、年上の夫と二人で集合住宅に住んでいました。ご夫婦は、いつも朗らかで楽しくお話をしていましたが、時々、医師の説明やテレビの内容などを、勘違いして受け止めていることもありました。

ある日、お宅に到着し、挨拶をしてサチさんの血圧を測ろうとしたときでした。私が持っていた緊急連絡用の携帯電話が鳴りました。ご夫婦から離れたところに移動して電話に出ると、別の利用者からの「体調が悪い」という連絡でした。

私はその日に出勤している看護師の訪問状況を考え、ベテランの看護師に電話をかけ、具合の悪い利用者の臨時訪問に行けるかどうか聞きました。すると、いま処置をし始めたところで、すぐには向かうことができないという返事でした。

緊急電話のあった利用者の家は、私が訪問しているお宅からそう遠くないところでした。そして、その日、サチさんの体調は落ち着いているようでした。そこで、まず私が緊急連絡のあった利用者を急いで訪問し、サチさんのお宅には別の看護師が30~40分後に訪問するという対応はどうかと、通話中の看護師と話し合いました。

サチさんとご主人に、私がいま退席させてもらい、後ほど別の看護師が訪問することについて相談しようと思い、ご夫婦の部屋に戻りました。すると、緊急の電話があったことを察していたご主人が無言でうなずき、玄関のほうに送り出す仕草をしてくれました。そして「うちは大丈夫だから」と一言。

感謝と申し訳なさを感じると同時に、サチさんご夫婦をとても頼もしく思いました。急に予定が変わったことを詫び、別の看護師が後ほど訪問するが、その間に何かあったら遠慮なく電話してほしいと伝え、緊急電話のあった利用者宅へ向かいました。

これはほんの数分のやり取りでしたが、利用者の方々にも助けられながら、一緒に地域を支え合っているのだなあと実感する出来事でした。他者への感謝と信頼、そして看護という仕事の奥深さをかみしめた1日となりました。お互い様と言い合いながら、バランスをとっていけるような地域をめざし、その一員として働いていきたいと思います。

看護コミュニティ

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