2020年、新型コロナウイルスの影響で、これまで当たり前だった生活が当たり前ではなくなってしまいました。学校や仕事に行けない、友人と気軽におしゃべりもできない、普通に買えていたはずのマスクが買えない。変わりゆく日常に、先の見えない不安に、沢山の人々が戸惑いました。私もその一人でした。
しかし、そのような中、芸能人が手洗いの動画を配信したり、飲食店がテイクアウトを始めたりするのを拝見し、世の中には自分にできる事を見つけて行動を起こすのがうまい人もいるものだと感心させられました。知り合いの看護師の中にも、ホームページを用いて現状や対策を発信するなど、いち早く活動を始めた人たちがいました。
そこで、私も何かできないかと考えました。私は、へき地の診療所や訪問看護ステーションで働いた経験があります。看護師として、ひとりの住民として、限られた資源を活用しながら仲間と一緒に活動することの大切さを学びました。
このような経験を生かし、今回、周囲の人々と一緒に布製マスクを作る活動を始めました。看護大学の実習室で使わなくなったシーツを再利用するというものですが、活動の背景には、看護師として、仲間が多く働く医療現場に1枚でも多くの使い捨てマスクを届けたいという思いがありました。また、非感染者が布製マスクを着用することは、ウイルスから自分を守ることであり、社会を守ることにもつながります。さらに、マスク不足に不安を抱えながら生活する人々にとっての安心材料になるのではないかと考えました。
活動を開始したところ、沢山の方々から協力や支援をいただきました。智恵や資金を提供してくださった方、配布先との調整をしてくださった方、励ましの言葉をかけてくださった方など、様々でした。中には、一緒にマスクを作りたいと名乗り出てくれた方もおり、「家から出られない状況で、報道を見るたびに気が滅入っていたが、マスクを作ることで、社会とつながっているという実感が持てた」と話してくださいました。マスクを受け取った方からは、「マスク不足の不安が和らいだ」「元気が出た」といったお返事をいただきました。
布製マスクを作ったことが、結果として感染予防だけでなく、不安を抱える人々の支えや、新しい行動を起こすきっかけになったのであれば、大変ありがたいことだと思います。これらも、看護師として、ひとりの住民として、人々とつながり、起こっている困難に一緒に立ち向かう存在でありたいです。