私:「小児集中治療室に勤務していました!」
他の看護師:「あーNICUですね!」
私:「えーっとNICUは新生児集中治療室ですね。新生児の重篤な疾患の子たちが入っているところですね。」
他の看護師:「あーGCUですね!」
私:「えーっとGCUは新生児の回復期治療室ですね。低出生体重で生まれてきた子たちが入るところですね。」
他の看護師:「小児集中治療室ってなんですか?」
私:「PICUって言うんですよ。」
このような会話は小児集中治療室(PICU)に勤務してから幾度となく繰り返してきた覚えがあります。覚えがあるというのは、あまりにもこの会話が多くてもう覚えおくのすら忘れてしまったからかもしれないです。
しかし、この会話にまさに小児集中治療室の現状の問題が反映されていると考えています。"小児集中治療室"は社会にまだまだ認知されていないのです。集中治療室は多くのドラマで取り上げられ、そして産科領域のドラマも増え、新生児集中治療室の認知も広まってきたように思います。しかしながら、小児集中治療室は未だ認知されていません。
これは私達、小児集中治療室で働く看護師にとって認知されていなくて悲しいという話ではありません。この問題の本質は、小児集中治療室で治療を受けてきた子ども達、そしてそれを支える親御さん、養育者の方達の苦労や戦いは未だ認知されていないということです。
小児集中治療室では多くの子ども達が病と闘っています。その多くは先天性疾患によるものが多く、"なぜこうなってしまったんだろう"という想いを多くの子ども達、そして親御さん、養育者の方達が抱えながら、それでも闘い続けています。
近年、小児集中治療室を無事退室し、退院できた子ども達と親御さん、養育者の方達は社会生活を送る中でも様々な不安を抱えながら生活を送っているということが海外では報告され始めてきました。しかし、未だ日本ではまだこのようなことは認知が進んでいません。
私の現在の研究は、海外の大学と提携し、日本国内での小児集中治療室での医療および看護の向上と、長期的な子ども達と親御さん、養育者の方達のサポート体制を作ることです。
"きっと私たちの苦労はわかってもらえない"、"言ったって誰もきっとわかってもらえない"という時代は早く無くさなければいけないと考えています。小児集中治療室は我々医療者と子ども達と家族が未来を作る場所であり、社会に出てからも支えになれる場所でありたいと考えています。
私:「小児集中治療室に勤務していました!」
他の看護師:「あーPICUですね!」
誰も知らなかったPICUを誰もが知っているPICUという4文字にするのが私の仕事です。