訪問看護師一年目のある日。
訪問看護の利用者さん「大変なお仕事よね。でも看護師さん長いこと続けてるってことは看護がお好きなんですね」
私「あ・・・いや、そんな・・・」
なんとも歯切れの悪い返し・・・。当時の私は「はい」とは答えられませんでした。
人との向き合い方も上手くない私は、看護って何なんだろう、それでも看護師を続けている自分って何だろう、と常にもがいていたように思います。
訪問看護を始めて5か月が過ぎたころ
利用者さん(Aさん)「私はこの方法が正しいと思う。人間らしく生きられると思う。
沖村さんはどう思う?一般的な意見ではなくて」
と意見を求められました。
医学的にはメリットもデメリットも半々です。医療者として、一人の人間として、相手の価値観も理解した上でどう答えるべきか、とても考えさせられました。結局、私の意見は逆であると伝えました。ご家族と一緒に過ごす時が長い可能性があるという点で、別の選択肢のメリットがAさんにとって大きいと考えたので、と添えて。
Aさん「なるほどね。それでも、たとえ時間が短くなったとしても、
人間らしさを優先したい。自分が正しいと思う方法でやってみたい」
と笑顔で伝えてくださいました。その後の訪問でも、いろんなことを質問してくださり、その都度一緒に工夫点を考えたり、話合ったりしました。
このやりとりを境に、病とともに生きる人がその人らしく生活できるために私が出来ることは?最善は何なのか?誰のための最善か?という視点をもって、自分の感情の動きを感じつつも、少し冷静に物事と向き合えるようになったと思います。
人間としてまだまだ未熟な私。
訪問看護師になって苦しい時もありましたが、笑顔で迎えてくれる利用者さんとそのご家族の顔を見る度に、こんな私を信頼し、待っていてくれる、その気持ちに応えたいと思えました。看護を行いに訪問しているのに、看護師として沢山のことを多くの利用者さんとご家族から教わり、育ててもらいました。
今、冒頭のような質問を投げかけられたら、きっとこう答えると思います。
私「ここ数年で、看護が好きかも、と思えるようになったところです」
この気持ちをもって、この春から教員の道を歩み始めています。教員としては遅いスタート。遠回りした、とも思います。でも、その間の経験はどれ一つ看護者として無駄にはなっていません。こんな職業も珍しいかな、と思います。