学生の頃から友達によく聞かれた質問。
最近は新型コロナウイルス感染症の流行により、メディア等で聞く機会も増えたであろう。しかし、保健師の仕事は感染症対策ばかりではない。
担当の地区では、母子、精神、成人、難病等、様々な分野の相談を受ける。新型コロナウイルスが流行し始めてからは、感染症対策課の応援として兼務となり、疫学調査や住民の方からの相談対応等も行っている。つまり、対象とする人は赤ちゃんからお年寄りまで幅広く、そして相談を受ける健康課題も様々である。
私が保健師を志した理由は、人々が暮らす地域にアプローチすることで予防的な関わりができるのではないかと考えたからだ。人々が不健康に至る要因は様々なものがあるが、その要因は個人の努力でどうにかできるものばかりではない。例えば、複数より1人で食べている人の方が死亡リスクは高い等の報告1)や、近隣に食料品店があれば野菜や果物の摂取頻度が多くなり、少ない環境では認知症リスクが1.65倍高いという調査結果2)もある。
例に挙げたように、人々の健康に影響を及ぼす要因は個人のライフスタイルレベルの小さいものから、その人を取り巻く社会のように規模の大きいものまである。そのため、保健師が直接的に関わることのできない分野はたくさんある。そもそも保健師活動とは、公衆衛生看護活動という呼ばれ方もするが、公衆衛生とは当然一人でできるものではない。たくさんの人との連携が必要だからこそ、思うように進まないと感じることもあれば、「地域」という場だからこそできることもある。
入職して数年目になるが、自分の無力さを日々痛感し、住民の方々から教わることばかりである。実体験に基づく子どもの事故予防のお話をしてくださった公民館の先生。健康教育をすることになって怖気づく私をフォローしてくださった地域の健康推進員さん。
「人々が住んでいるだけでいつの間にか健康になってしまうような地域をつくりたい」と、大きな夢を抱いて地域にいったものの、果たして私は貢献できているだろうか。教えていただくことの多さに日々感謝の気持ちでいっぱいである。
1) Tani Y., Naoki K., Hisashi N., et al. (2018): Eating Alone Yet Living With Others Is Associated With Mortality in Older Men: The JAGES Cohort Survey, The Journals of Gerontology, 73(7), 1330-1334.
2) Tani Y., Suzuki N., Fujiwara T., et al. (2019): Neighborhood Food Environment and Dementia Incidence: the Japan Gerontological Evaluation Study Cohort Survey, Am J Prev Med, 56(3), 383-392.