2022年3月18日。私の勤務する小学校の卒業式でした。
第1部は146名。コロナ禍なので列席者は1家庭1人まで、在校生の列席はなしという対応で、保健室登校の児童のうち2名はこちらに出られました。
第2部は朝から保健室に来ていた1人。保護者は全体の式に出てから保健室へ。校長から卒業証書を受け取ることを拒否したので、支援担当教諭から「はい、おつかれさま!」「あ、どうもありがと」みたいなノリで渡されました。
第3部は午後。朝から何度も連絡が入り、やっと決まった来校時間。職員玄関で、どこがいい?と聞くと「保健室がいい」と小さな声で言ってくれたので、保健室で校長から卒業証書を受け取りました。
毎年、保健室で小さな卒業式が行われ、数人の児童がここから巣立っていきます。
そう、ここは、彼らを守る「小さな巣」だったのだと思います。羽を痛めて飛べない鳥たちを、元気になるまで守る巣。
セーフティネットという言葉が20年ほど前から社会保障の分野で言われ出しました。いつからか、教育現場では「子どものセーフティネットとしての学校」とか「学びのセーフティネット」などと言われ、学校は支援を必要とする子どもや家庭を見つけることのできる場として期待されるようになりました。さまざまな支援が必要な子どもたちが、一人残らず適切な支援を受けられ、家庭が機能するように、多くの機関と連携しています。
学校がセーフティネットだとすれば、保健室は「セーフティネスト」ですね。傷ついた鳥たちが、安心して羽を休められる巣。
うまく風をつかまえて、遠くまで飛べる鳥もいますが、逆風の中飛び続けなければいけない鳥、もう無理だと舞い降りる鳥、方向を見失って何かにぶつかり傷つく鳥もいます。その鳥たちが、いつでも好きな時に、羽を休めに来られる巣。安全で、安心で、何の心配もせずにいられる巣。そして、もうだいじょうぶ、と「自分自身が」思ったときに、後を振り返らずに飛び立てる巣。
養護教諭になろうと決めたのは、大学3年の時に子どもを産んでから。それまでは看護師になるものとばかり思っていましたが、家族の希望や、私自身「子どものための仕事がしたい」という思いが生まれました。保健師もいいなと思いましたが、住まいのある自治体では年齢制限でひっかかり、受験すらできません。そんな時、そういえば地域看護で養護教諭の話があったなぁと思い出しました。保健師免許からの養護教諭2種免許だったので、卒業から1年経たないと教員採用試験が受けられない、みたいな話が授業中にされたそうですが、先生の話をちゃんと聞いていなかった私は試験を受けてしまい、受かってしまい、教育委員会にちょっと叱られつつ採用されて21年になります。
21回目の卒業式は、3部とも涙を見せずに終われました。巣を飛び立った鳥たちはきっと大丈夫だと信じられたからだと思います。彼らは「セーフティネスト」があることを知っている。これからも飛び疲れた時には、自分で巣を見つけて羽を休めることが出来ると思うから。
そして、4月。新たに迎える143羽の小鳥たち。22年目のセーフティネストで見守ります。